相手目線に立てる人
都心から電車で2時間ほどかかる地方都市に、幸恵さんは住んでいる。
待ち合わせたのは駅前のデパート。わかりやすい場所ということで、彼女が教えてくれたのだ。
移動中、電車が事故で遅れそうになったので、「遅くいらしてくださいね」と連絡を入れていたのだが、予想より早い時間に着いたら、彼女はもう私を待ってひとりでじっと立っていた。
「幸恵さんですか?」と声をかけると、
「人を待たせるのは苦手なんですよ」
とはにかむように言い、「遠くまですみませんね、大変だったでしょう」と私を気遣った。
思いやりの目線を持った人なのだなあと思った。
結婚の話をする機会が増え……
話をするために、私たちはすぐそばにあったスタバに入った。
カジュアル過ぎるかなあとも思ったが、「ここはゆっくりできますよ」と優しく言っていただけたので言葉に甘えて中に入ると、都会の店のようにパソコンをする人だらけではなくて、買い物帰りにくつろぐ女性たちの姿が目についた。
「話を聞いてくれるなんて、ありがたいと思っています」
ソファ席に腰を落ち着けると、開口一番に幸恵さんは言った。
「結婚を決めてから、同世代の女性はもちろん、年下のアラサー、アラフォー女性たちからもどうやって出会ったんですかと凄く聞かれたんですよ」と嬉しそうに説明する。
「自分の話が参考になるなら、なんでも聞いてください」という彼女に、まずは経歴的なところから聞かせていただくことにした。
39歳まで地方暮らし
地方で生まれた幸恵さんは、大学卒業後に一度、地元で社会人を経験してから、アメリカに留学。
小さいころから英語を使う仕事をしたいと思っていたので、帰国後は実家に戻り、外資系企業で外国人の秘書をした。待遇は、派遣社員。
その地方では英語を使う仕事が限られていたので、派遣に甘んじることになったのだが、40歳を前にして、得意ではなかった技術系の翻訳をする部署への異動が決まり、転職を考えた。
派遣会社に相談すると、「あなたなら東京でもやっていけますよ」というので、思い切って上京を決める。新しい勤務先は、都内にある大手金融会社だった。
「では、そのとき39歳ですか? 上京する前に、結婚については考えたりしなかったのですか?」