結婚を意識したことはない
素直に疑問を口にすると、
「そうですよね。普通は30代までに結婚を一度は考えますよね。だけど、私には妹がいて、妹が早く結婚して、子供も産んでいたので私はいいかなとのんきに構えていました」
「結婚したい」と考えたこと自体、あまりなかったのだという。
「結婚したい気持ちよりも、『仕事をちゃんとしたい』『英語を上手に使いたい』という気持ちが強くて、結婚についてはたいして意識しないまま、30代が終わった感じです」
のんびりとした口調で答えた。
彼女の場合、バリバリのキャリア志向というのでもなく、単純に、「したいことを追いかけ続けて、よそ見する暇がなかった」感じだった。
40歳で相談所に入会
転職先では、英語を使うわけでもなく、待遇も最初は派遣だったが、働きぶりが認められて、その後、正社員になった。
年収は500万円で、住まいは山手線の内側。待遇にも、暮らしにも、なんの不都合もなかった。
「でも、40歳を過ぎたときに、お見合いをしたんですよ」
急にいたずらっぽい表情になると、秘密を打ち明けるように言った。
「実家の父が病気になりまして、遅ればせながら、このまま一人というのはどうかなあと思い始めまして……。大手結婚相談所に確か20万円くらいかけて入ったんですよね。だけど、当時はまだ今みたいにシステムがしっかりしていなくて、パソコンを使って自分で相手を探すこともできないし、写真も見れなかったんです。毎週毎週、男の人のプロフィールが書かれた紙が束でダダーッと送られてくるんですが、そんなの見たって、誰がいいとか全然わかりませんよね。なので、ひと月で退会しました。……2人くらいは会いましたけど、印象は良くなかったですね」
淡々と毎日が経過
「それだったら、20万円がもったいなかったですね」と言うと、「いえいえ、当時はまだのどかな時代だったので、大半が返ってきましたよ」と笑いながら、教えてくれた。今の彼女にとってはもう、“どうでもいい”昔話だった。
その後は、バレエを習い始めて、週に2~3回通うほどに熱中。平日は仕事で忙しく、週末はバレエ関係で予定が埋まるので、月日は淡々と過ぎていった。
結婚は、「しない」と決めたわけではなかったけれど、毎日の生活をこなしている中で、その単語がよぎることはなかった。……49歳になるまでは。
そう、彼女は49歳で突然、婚活を始めたのだ。