長沼毅は、深海、火山、砂漠、南極など、地球上の辺境に生きる微生物を調べることで、
生命はどこからきたのか、という大きな謎に挑み続ける研究者である。
研究への尽きぬ興味は、どこから生まれどこへゆくのだろうか。
高井(以下、●印) では、まずは先生が研究者の道を選んだきっかけを振り返っていただけますか。
写真:elina yamasaki
長沼(以下、——) これは、さかのぼると幼稚園までいっちゃう。幼稚園の年少組の頃、園の滑り台から砂場に着地した瞬間に、ふと思ったの。「自分はいったいどこから来て、どこに行くんだろう」って。どこからかといえば、母親のお腹から生まれてきたわけだけど、お母さんはそのまたお母さんから生まれて……とさかのぼって考えた。たぶん数列のようなものをイメージしていたんじゃないかと思うね。始まりと終わりはなんだろうと考える感覚に目覚めて、それ以来、何かの起源を考えることが好きになったわけ。『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』という有名な本があるけど、そんな感じだったかもしれない。
そのうち、自分が生まれたのはガガーリンが初めて宇宙を飛んだ日だと知って、俄然宇宙に興味を持つようになって。起源を考えるのが好きな子が宇宙に目覚めたら、「宇宙の起源」に興味が行くのは当然でしょ。宇宙の起源を知るためには宇宙に行かないといかん、と思いこんで、いつか宇宙飛行士になってやろうと思うようになったわけ。
●「鉄腕アトム」のお茶の水博士の存在も大きかったとか。
——別にお茶の水博士がカッコいいと思ったわけではないよ。「ラララ科学の子〜」っていう歌を聞いて、科学というのはきっとすばらしいものなんだろうな、と思ったの。科学に親近感をもって、宇宙の起源の問題も科学によって解決できるんじゃないか、と幼稚園のときに直観したね。
だけど、その後の小学校時代は暗黒だったね。父親が船乗りでインドネシア航路の貨物船に乗っていてあまり家にいなかったから、それで気負って育ったからか、先生にいちいち口ごたえするような子だった。