2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2016年2月29日

再生医療とも連携

講演する山海嘉之サイバーダイン社長(日本記者クラブ提供)

 脳性まひや脳卒中の病気で手足が動かなくなった患者に対してこの装置を付けると、歩けるようになるなど、「世界初のサイボーグ型ロボット」が驚くべき治療成果をあげており、「今後は再生医療と組み合わせ、iPS細胞(人工多能性幹細胞)との連携も重要になってくる」と述べた。

 このロボットを腰に装着すると、65キロもあるダンベルを軽々と持ち上げられる上に、長時間、何回でも安心して重いものを持ち運ぶ作業が楽にできる。このため、建設現場だけでなく、お札の束を運ばなければならない金融の世界にも使われている。お札も束になると重くなり動かすのは重労働になるため、このロボットを腰に付けると重い札束の荷物も難なく上げ下ろしができる。清掃の分野でも使われており「六本木ヒルズや羽田空港では掃除ロボットとして試験中で、空港では車いすの人の荷物をロボットが運ぶこともできる」と活躍が期待される。

開拓型の人材育成を

 大学発ベンチャーを規制や制度を変えながら、ロボットの実用化に至るまでは苦労の連続だった。

 先端技術のイノベーションの場合、山海社長は「マーケットもない。使ってくれる人もいない。専門家もいないなど何もない中で全部を自分で育てなければならなかった」と振り返った。その上で、問題を解決できる新しい人材開発の必要性を強調、「日本は明治以来欧米に追い付け追い越せで、何でも早く外国のものを取り入れようとしてきた。これは産業の近代化に大きな成果を残したが、フロントランナーとして歩んでみると、この仕組みは限界が来ている。重要なことは、未来分野を開拓する開拓型の人材を育成し社会創出につなげることで、これが社会や産業の変革につながっていく」と指摘した。産業創出に向けた人材育成には「大学院で育成プログラムを準備するなどの方法があるが、一つの大学でなく、複数の大学で一つ持ってもいい」と述べた。

 少子高齢化の進行により2050年代には国民の40%以上が65歳以上になる。これをどう解決するのか、人とロボットで共に支えあうテクノピアサポートを提唱したい。サイバニックシステムは介護する側とされる側の両者に対して役立つ技術を作ることができる。


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