■今回の一冊■
ARGUING WITH IDIOTS 筆者Glenn Beck, 出版社Threshold Editions, $29.99
またまた、オバマの経済政策を痛烈に批判する書籍が人気を呼び、ベストセラーリストの上位を快走している。ニューヨーク・タイムズ紙の単行本ノンフィクション部門の週間ベストセラーリスト(ウエブ版10月1日付)では1位で初登場し、直近(ウエブ版11月12日付)のリストでも4位につけている。
オバマ大統領の来日では歓迎ムードが盛り上がった日本だが、おひざ元の本国アメリカでは必ずしもオバマ大統領への支持は盤石ではない。特に、オバマ政権の経済政策への保守派の反発は根強いことが、反オバマ本の売れ行きの良さが物語る。
筆者のGlenn Beckは、時事問題を扱うラジオ番組やテレビ番組で司会を務める論客。不法移民、銃規制、経済政策、憲法など、さまざまな社会問題を俎上にのせ、党派を超えて痛烈な社会風刺を展開する。本のつくり自体も図表などをふんだんに掲載して、テキストブックのような体裁をとり、パロディーやジョークを交えながら議論を進める。民主党だけでなく共和党の政策にも辛口で、党派を超えた議論を展開しているとはいえ、大きな政府に反対し、個人の権利の尊重、自由主義市場を信奉する点では、アメリカの保守派の考え方に重なる部分が多い。
タイトルのARGUING WITH IDIOTS(愚か者との議論)は、本書が愚か者(あくまでも筆者が愚かだと思っているだけだが)との想定問答集の形をとっていることからきている。例えば、次のような愚か者の問題提起が赤字の大きな活字で出てくる。
“Glenn, you need to read history ―the New Deal resulted in tons of new spending and it got us out of the Great Depression!”(p201)
「グレン、歴史を学ぶ必要があるよ。ニューディール政策では政府支出が巨額にのぼったけど、そのおかげで大恐慌から抜け出せたんだよ」
ニューディール政策に関するこの問いかけへの反論の一部は次のような具合だ。