2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2016年3月13日

19世紀に建てられたオーストリア・ウイーンの国立オペラ座。今も当時と変わらぬ外観を残す(iStock)

 さらに、14年の豊島区新ホール基本計画には、参考資料として過去3年間に豊島公会堂を利用した団体のアンケートが掲載されている。選択肢を3つまで複数回答できる方式で集計されたアンケートの中で、注目すべきは「特に要望や不満はない」との回答が公会堂の設備・運営については12.4%、舞台・周辺関連についても18.1%得られていることである。これらは何を示唆しているのだろうか。

便利さと引き換えに失う文化拠点と時代の証人

 館内ではところどころ壁のひび割れやペンキのはがれなどが散見され、雨漏りに悩まされたこともあったという。思わぬところに段差が潜んでいることもあり、バリアフリーとは縁遠い。先のアンケートでも公会堂の設備・運営について「バリアフリー施設になっていない」との回答は21.9%にも達している。

 しかし、老朽化の修復やバリアフリーへの対応を図るのであれば施設の改修という道もあったはずだ。

 豊島公会堂だけではない。昨今、“2016年問題”などと称されるコンサート会場の閉鎖ラッシュが叫ばれる。その渦中には豊島公会堂のように建て替え、取り壊しが行われるものも複数存在し、新宿厚生年金会館や両国公会堂は既に閉館・取り壊し済みとなっている。現在閉鎖中の日本青年館や渋谷公会堂も建て替えが行われ、これまでの趣とは異なる姿に変貌を遂げる。

 余談ではあるが、オーストリアやドイツといった欧州各地に現存するオペラハウスは多くが19世紀に建築されたものでありながら、改修を重ね、19世紀当時と変わらぬ姿を今も留めている。建て替えで昔の面影などかけらも残らぬ施設へと生まれ変わる日本の建造物とは大違いだ。

 公会堂の一般開放は本日13日の9時から17時までである。戦後の混乱の時代から存続してきた公会堂の最期を目に焼き付けるべく、ぜひ足を運んでほしい。

  
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