クリントン候補のトランプ攻略法
トランプ候補は、これまで他候補よりも多くのメディアに登場し、そこで自身の強いキャラクターを全面に出して、メッセージを発信するという空中戦重視の選挙運動を展開しています。同候補は、職業政治家や連邦政府に怒っている有権者に対して、どのようなメッセージを発信すれば彼らの心をつかめるかを本能的に理解しています。
一方、クリントン候補は地上戦重視の選挙運動を行っています。同候補は、投票を約束させるために支持者に対して署名を求めるコミットメントカード(約束カード)を活用するなど、科学的な戸別訪問により投票率向上を図っています。仮に2人の候補が指名を獲得すると、「空中戦対地上戦」及び「本能対科学」という対極的な選挙戦になることが予想されます。
ではトランプ候補が、指名を獲得した場合、クリントン候補はどのようにして同候補を攻略していくのでしょうか。
まず、女性票獲得を目指すクリントン陣営は、トランプ候補の女性蔑視の発言を取りあげ、同候補を「性差別者」として描くことは確実です。トランプ候補はビル・クリントン元大統領の過去における女性スキャンダルを持ち出して反論しますが、白人男性票を期待できないクリントン候補は、トランプ候補を性差別者であると繰り返し述べるでしょう。
次に、クリントン候補は、トランプ候補は「人種差別者」であるというメッセージを送ります。戸別訪問を行うと、クリントン候補を支持する大抵のアフリカ系の有権者は、トランプ候補を人種差別者だと断言します。
さらに、クリントン候補は、人種や民族において排他的な傾向が強い「アメリカを再び偉大な国にする」というトランプ候補のスローガンを否定するメッセージを発信し続けるでしょう。クリントン候補はトランプ候補を「排他的な人物」として描き、特定の民族や人種の多様性を排除する政策ではアメリカは強くならず、全てのそれを包含する必要があるというメッセージを送るのです。
それらに加えて、クリントン陣営は、トランプ候補の資質と気性を取り上げ、同候補が「危険な人物」であるというレッテルを貼ると予想できます。戸別訪問において、有権者は同候補が「恐ろしい人物」であると語るのです。国家安全保障の問題に関する知識が浅く、米軍最高司令官としての資質に欠け、しかも気性が荒い同候補に核のボタンを任せることは極めて危険であるとクリントン候補は議論するでしょう。