2024年7月14日(日)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年3月22日

 2012年米大統領選挙において、オバマ陣営がビジネスマンのミット・ロムニー候補に使った戦略を用いることも可能です。同陣営はロムニー候補を従業員のクビを切り、雇用を海外に流出させる冷淡なビジネスマンであるというイメージ作りに成功しました。同様に、クリントン陣営も、トランプ候補の過去のビジネスに関する問題点を徹底的に洗い出し、「心が冷たいビジネスマン」としてトランプ候補を描くでしょう。

 要するに、性差別と人種差別を行い、排他的な思考様式を持つ危険で恐ろしい人物であり、しかも心が冷たいビジネスマンというのが、クリントン陣営が描きたいトランプ像なのです。

クリントン選対で電話による支援要請を行う労働組合員(筆者撮影@フロリダ州マイアミ・ビーチクリントン選対)

鍵は無党派層と労働組合員

 クリントン陣営が最も重点を置くのは、トランプ陣営の弱点である地上戦です。戸別訪問を柱とする地上戦には、若者の参加が不可欠です。ミニ・スーパーチューズデーにおいてクリントン候補はフロリダ州とオハイオ州の両州で、サンダース上院議員を破りました。ところが、米ニューヨーク・タイムズ紙の出口調査(不在票及び期日前投票を含む)をみますと、若者(18歳-29歳)に対してサンダース上院議員がクリントン候補を、フロリダ州で36ポイント、オハイオ州では70ポイントもリードしました。予備選挙及び党員集会において、若者におけるクリントン候補の不人気は、陣営にとって深刻な問題になっています。

 では、本選でトランプ候補と対決した場合、予備選挙のようにクリントン候補は若者の票を獲得できないのでしょうか。USAトゥデイによる世論調査(2016年3月3日-同月10日実施)によれば、「クリントン対トランプ」の仮想対決では、35歳以下の若者において、クリントン候補はトランプ候補を52%対19%で、33ポイントもリードしています。本選でクリントン候補は、若者の票を獲得できないという現在直面している問題をある程度解決できるかもしれません。

 しかし、クリントン陣営が地上戦で最も重視している戸別訪問は、若者を中心とした機動力が欠かせません。これまで、筆者はアイオワ州デモイン、ニューハンプシャー州コンコード、テキサス州ダラス及びミシガン州デトロイトで合計1505軒の戸別訪問を実施してきました。その結果、無党派層と労働組合員にトランプ候補とサンダース上院議員のメッセージが浸透し、クリントン候補は票を奪われていることが明確になりました。

 特にクリントン候補は、東部ニューハンプシャー州では無党派層、中西部ミシガン州では労働組合のそれぞれの票をトランプ候補及びサンダース上院議員に獲得されているのです。現時点での本選の予想は、フロリダ州、オハイオ州並びにバージニア州に加えて、上の2州が激戦州として勝敗に関わる可能性があるということです。

 従って、クリントン候補は、本選に向けて無党派層と労働組合の支持を拡大していかなければなりません。さらに、同候補が地上戦を有利に進めて行きトランプ候補を攻略するためには、サンダース陣営に参加している若者の力が必要なのです。
 

  
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