2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月4日

 特に重要なのは、離脱論への反論です。離脱派は、離脱すればEUとより自由に貿易を続けられると言うが、EUは、EUのルール遵守をEU市場へのアクセスの条件とするだろう。主権が回復するというが、それは錯覚で、英国は主権を回復するどころか、大きく影響力を失う。移民については、英国がEU移民を厳しく対処すれば、EU市場へのアクセスを失うであろうと言っています。

なぜ英国はEU離脱にこだわるのか

 これらはいずれも正論で、核心をついた議論と思われます。EU離脱が英国の利益にならないことは明らかです。しかし、離脱派は説得されません。離脱を支持する6名の閣僚や、ジョンソン・ロンドン市長などはこのような議論に耳を貸しません。

 英国にとってEUは、英国は大陸欧州とは違うという歴史に根差したアイデンティティの問題であり、離脱派の議論、心情には、このアイデンティティが深くかかわっています。それが、英国のEU離脱(あるいは残留)問題の難しいところです。

 英国は、この問題を巡り、指導層、世論とも真っ二つに割れています。国民投票の行方は全く予断を許しません。英国、欧州、そして世界は、英国のEU離脱という激震が起こりうることに、心の準備をしておかなければなりません。

  
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