2024年7月16日(火)

坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

2016年4月6日

 じり貧企業に所属していたエンジニアが外資系企業に買収されて輝きを取り戻す事例は数多く存在する。例えば、シャープの堺工場は本体に先駆けて一足先に鴻海の傘下に収まったが、ここで働く日本人エンジニアは「シャープのままでなくて本当によかった」と発言している。シャープのままであれば今頃リストラ対象になっていただろう。

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 白物家電事業が中国の家電メーカーであるハイアールの傘下に収まった元三洋電機のエンジニアも「研究開発費が潤沢になり、以前より作りたいものを作ることができるようになった」と話していたと聞いている。鴻海に買収されることで、シャープのエンジニアは今後、これまでやれていなかった商品開発に着手できる可能性が高まった。今後の活躍に期待したい。

 私が以前CEOを務めていたエルピーダメモリも米マイクロンに買収されたが、エルピーダが手掛けていた事業が現在ではマイクロンの稼ぎ頭となっている。「オールジャパン」などといって官製ファンドなどが筆頭株主にでもなっていれば、リストラの憂き目にあっていた従業員も多くいただろう。「マイクロンに買収されてよかった」という声をよく耳にする。

 詳細は次回以降に譲るが、かくいう私も今年に入ってから立ちあがった半導体企業・サイノキングテクノロジーのCEOを務めることになった。日本・台湾の技術力と中国の資本力を活かして、競争力があり、世の中に必要とされる半導体を、日本企業をはじめ、世界に提供していきたいと考えている。

 グローバル企業は生き残りをかけて世界中の企業と合従連衡を図っている。「オールジャパン」に拘泥すれば、雇用も税収も失い国力を弱めるだけだ。

  
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◆Wedge2016年4月号より

 


 


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