停戦は事実上崩壊
こうしたプーチン氏の政治的な思惑の一方で、2月末から辛うじて続いてきたアサド政府軍と反体制派間の停戦は事実上、崩壊状態に陥っている。とりわけシリア最大の都市、北部のアレッポ周辺などでの戦闘が4月末から激化。過去1週間の戦闘で250人以上が死亡した。
しかも同市では、政府軍、反体制派支配地域にある双方の病院なども砲撃を受け、数十人が死亡。5日には北西部のイドリブ県の難民キャンプが空爆され、子供を含む28人が犠牲になった。難民キャンプはアレッポなどから避難してきた人たちが居住していた。政府軍、ロシア軍ともこの空爆への関与を否定している。
戦闘が激化しているのは、国際テロ組織アルカイダのシリア分派「ヌスラ戦線」が攻勢を強めていることも要因だ。「ヌスラ戦線」は停戦の枠組みから外されているが、反体制派側に立って政府軍と戦闘しており、5日から6日にかけてアレッポ南郊の複数の村を占領した。「ヌスラ戦線」には国連主導の和平協議に反対している反体制派の有力武装組織「アフラル・シャーム」も加わった。
アサド大統領は5日、旧ソ連の対ナチス・ドイツ戦勝記念日を前にプーチン大統領に祝電を送り、ロシアの支援に感謝。同時にアレッポを第2次大戦の有名な激戦地スターリングラード(現ボルゴグラード)になぞらえて勝利を誓った。
米ロは4日、戦闘がこれ以上拡大しないよう停戦を維持していくことで合意し、両国が停戦の監視を強化していくことを発表したが、その後も戦闘が続いており、停戦の継続に大きな疑問符が付いている。
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