意外と届いていた支援物資
しかし実際に現場に行ってみると、その支援物資の山が、この2、3日できれいさっぱりなくなっていた。
その日の夕刻、県庁横の小屋には50人ほどの人が、三々五々集まってきた。各地の避難所で医療や物資供給など様々な分野で活動する県内外のボランティア団体の代表者が毎日19時に集まり、被災状況により異なる避難所のニーズや被災者の状態などを情報交換していた。「旅館やフェリーの被災者への開放情報はあるが、食料も支給されるのだろうか」「テントが100張り、益城町に週末立つ予定と聞いたが、どこの避難所か」など様々な情報が活発に交換されている。
そんななか物資関連では「支援物資が手元に集まっているが配布先が1団体しか決まっていない、ニーズはありますか」との問いかけや、「3800個カップ麺の寄付を受けましたが配布先が決まっていません。必要な方は明日の午前中までに連絡をください」との呼びかけにも、その場で手を挙げる人はいなかった。
会議を運営する全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)準備会の明城徹也事務局長も「各ボランティア団体の報告によると、水や食料などの最低限必要な物資は各避難所に行き渡っているようだ」と教えてくれた。
奏功した“プッシュ型”
震災初期からの数日間でなぜ物資が避難所までスムーズに届けられたのだろう。その理由のひとつには、緊急時の支援物資の供給方法において東日本大震災の教訓が生かされたことが挙げられる。
災害時の支援物資の供給方法として、従来から被災地のニーズに応じて物資を供給する「プル型」を基本としていたが、東日本大震災では支援物資が届かないといった事態や遅配が起こった。その教訓から災害対策基本法を改正し、備蓄する物資や資材が不足して対策が迅速に実施できないほどの緊急を要する場合には、被災地からの要請がなくてもニーズを予測して物資などを供給する「プッシュ型」が取り入れられることとなった。