集積拠点での仕分け業務に行政などから助っ人を送り込むことも当初は検討されたが、「東日本大震災では逆に足手まといになった反省から、今回は民間企業に任せることにした」(内閣府関係者)。日本通運などの民間物流事業者は、通常の配送を一時止めて、支援物資の配達に専念する態勢を整えた。
東日本大震災を経験した物流専門家を全日本トラック協会や各企業が集積拠点に派遣したことで、倉庫や車両の運用効率も上げることができた。
「どの大きさのトラックに物資を積み込むと効率的なのか、そもそも避難所に大きなトラックが入れるのかといった現地情報を先に収集することで、効率的なロジスティクスを組むことができました」(全日本トラック協会の荻原正吾・交通・環境部長)。
「避難所のニーズが刻一刻と変化することを経験則的に熟知しており、配送予定当日の朝に自治体に電話をして、配送予定の支援物資とリアルタイムのニーズにミスマッチがないかを逐一確認しました。東日本大震災を経験した社員を送り込んだのが良かったのでしょう」(日本通運)。民間物流事業者の功績が大きい。
きめ細かな支援に向けたボランティアとITの活用
避難所までの支援物資の輸送については東日本大震災のいくつもの教訓が生かされたが、細かな課題がないわけではない。例えばプル型では、市町村が県に、県から国に、と順番に避難所のニーズが上げられていくが、その過程でどうしても時間的なロスが発生してしまう。
そこでゴールデンウィーク前からiPad1000台を避難所などに配布し、クラウドを活用することで、各避難所のニーズを市町村・県・国で、一元的に管理する取り組みが試行的に始まった。
また、国から供給された支援物資とは別に、企業や個人から県に寄贈された物資が一部、市町村のニーズとうまくマッチングできずに在庫として余る事態が発生していた。そこで、前出のJVOADに参加する団体が、自治体が指定していない避難所などに自主的に避難している被災者のニーズを拾って、救援物資の仕分けを行ったり、他で余っている物資を配送したりする支援を始めた。
民間事業者だけでなく、ITやボランティアをもっとうまく組み合わせることができれば、支援物資問題はさらに改善できるはずだ。
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