2024年11月24日(日)

Wedge REPORT

2016年5月14日

益城町総合体育館でお菓子を食べる少年。ジュースなどの物資も届けられていた(CARL COURT/GETTY IMAGES)

 熊本地震では発災直後はプル型で供給されたが、「南阿蘇など甚大な被害を受けた地域は混乱を極めており、要望が上がってくる状況ではなかった」(内閣府関係者)ことなどから、19日にプッシュ型へ移行した。それに合わせ、高速道路の通行車両のオペレーションも改善された。九州を縦に貫く大動脈、九州自動車道を運営する西日本高速道路が、それまで松橋インターチェンジ(IC)〜八代IC間では赤色灯を備えた緊急車両しか通していなかったが、植木IC〜益城熊本空港IC間については、物資輸送車両の通行も認めるようになった。

 プッシュ型への移行と物流の回復が奏功し、物資が広く行き渡るようになり、23日には再びプル型に戻された。

熊本で採用された“岩手方式”

 物資の輸送体制にも過去の経験が生かされた。それは東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県で導入された物資輸送の形態で、後に関係者の間で「岩手方式」と呼ばれたものだ。

 過去の震災では直接、市町村に物資を届けていたが、岩手方式では中継点となる「集積拠点」を設け、そこで仕分けをして市町村に送り込むことで効率性を高めた。熊本地震では、16日夕方に佐賀県鳥栖市にある日本通運の流通センターを集積拠点とすることになった。

 「集積拠点は被災地の近くである必要は必ずしもありません。むしろ離れていたほうが被災の混乱もなくスムーズに作業が進む可能性もあります。距離の近さよりも、いかに作業の効率を上げられるかが重要です」(岩手県トラック協会の佐藤耕造・専務理事)

 また、熊本地震では、プッシュ型への移行に合わせて、20日に集積拠点を1カ所から5カ所に増やした。その際、鮮度が重要となる食品とそれ以外の物資とで集積拠点を分けることで効率性を高めた。

 その後23日に再びプル型に切り替えた後には、鳥栖の日本通運の流通センターとヤマト運輸ロジクロス福岡久山の2カ所に集積拠点を減らしている。


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