この熱き人々

2016年6月20日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 常識的にはそれだけでも手一杯のはずだが、その上に、映画祭の主宰とシアターの運営管理の仕事が乗っているということになる。加えて、観光庁のVISIT JAPAN大使、外務省「ジャパン・ハウス」有識者諮問会議や映画倫理委員会の委員などを務め、今年は新たに、東京都からの要請で東京ブランドを世界に発信する「東京ブランドアンバサダー」に就任した。

 別所の場合、俳優の顔ですべてをこなしているわけではなく、たくさんの顔を持っているためにそれぞれの顔を求められて多岐にわたる仕事が発生している。心が動くことは何でもやってしまう。何かを捨てて次に進むのではなく、何も捨てずに重ねていく。しかも一過性ではなく、それぞれが長く継続される。

 幹があって小枝が伸びるというより、種子が落ちたところに幹が林立しているというイメージである。それなら根にあたるのは何なのだろうかと、地中を覗きたくなる。

 「それは俳優です。すべてが俳優・別所の表現につながっていると思っています」

 間髪を入れずに答えが返ってきた。

 昨年は初めて、河瀬直美監督の短編映画「嘘」に自ら出演。今年の6月には「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2016」が開催され、映画「マザーレイク」も公開、夏には舞台「南太平洋」で全国ツアー。その間もずっとラジオの生番組は続くのである。毎朝起床は4時半。睡眠時間は4時間程度。それなのに疲れた顔は見たことがない。どれだけ超人なのかと思う。

 「僕はいつもオンなんです。生きている間はずっとオンだと思ってる。子どもと一緒の時も、プライベートで旅に行ってる時も、遊びとしてオン。眠っている時も、寝るというオンなんです」

 どうやらオフというボタンは別所の中には存在していないらしい。この日も4時半起き。すでに12時間以上、それぞれ色合いの違う仕事や時間に全力で向かい合っているはずなのに、翳(かげ)りのない笑顔を残して力強い足取りで次の予定に向かって飛び出して行ったのである。

(写真・岡本隆史)

べっしょ てつや/1965年、静岡県生まれ。90年、日米合作映画「クライシス2050」でハリウッドデビュー。99年より日本発の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル」を主宰。2010年、第1回岩谷時子賞奨励賞受賞、12年、内閣府の「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」の一人に選出される。16年、東京ブランドアンバサダーに就任。

  
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◆「ひととき」2016年6月号より

 

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