Atlantic Councilのイラク専門家Younisが、5月5日付のフォーリン・アフェアーズ誌のサイトで、最近のイラクの政治危機への米国の対応について述べています。要旨は以下の通りです。
アバディ首相の政治改革が成功するためには、サドル派の大衆行動(国会議事堂占拠を含むバグダッドのグリーンゾーンへの抗議行動)も短期的な効果を持ち得るが、より長期的な変化をもたらすには、米国の支援が不可欠である。
イラクの安定には政治改革が必須であり、このような改革はイラクだけでは為しえない。現在の混乱は、機能不全に陥っているイラクの政治システムを改革するのに、良い機会を提供する。
これまでのイラクの政治システムは国民への基本的なサービスを提供することに失敗した。スンニ派の疎外感、不満も、政府機関の腐敗や機能不全によって一層悪化している。
イラクの安定のためには、ISとの戦いで重要な役割を果たしているシーア派民兵組織の対IS戦終了後の解体や経済改革の実施などが必要であるが、その実行には国民からの強い支持が必須である。
アバディ首相は、状況、問題点を十分に理解しているが、改革を実行するのに必要な政治的基盤を有しておらず、米国はその影響力を行使して首相の政治的合意形成の動きをサポートすべきである。
米国として、サドル派の目的に懐疑的なのは理解できるが、サドルによるテクノクラート的内閣の任命要求は、イラク政府をより効率的なものにする機会を提供しており、このような動きを支援すべきである。
出 典:Nussaibah Younis ‘Sectarianism and the Protests in Baghdad; How to Make Iraq a Viable State‘ (Foreign Affairs, May 5, 2016)
https://www.foreignaffairs.com/articles/iraq/2016-05-05/sectarianism-and-protests-baghdad