2024年4月27日(土)

ASEANスタートアップ最前線

2016年6月9日

自前キッチンを持つGRAIN

 フードパンダにしろ、Deliverooにしろ、UBER EATSにしろ、レストラン側とプラットフォーム側で利益を分けるため、薄利構造には変わりない。そこで、スタートアップ自身でキッチンを持って料理を作り、価格競争力を持ってしまえばよい!という発想が、ここ最近のフードテックのトレンドだ。   

 「GRAIN」は、当日オーダーこそできないが、前日までにオーダーしておくと、当日指定の時間レンジの中で届けてくれる。企業側にとっては、注文と料理時間、デリバリーに時間的なゆとりがあるため、注文数に合わせてデリバリー人員や野菜などの調達材料をコントロールできる。かつ、同じメニューのフードを大量生産するため、規模の経済が働き効率も良い、というわけだ。

 私個人はGRAINのサービスは利用したことが無いのだが、マレーシアの類似企業、「DahMakan」がスゴイとのことで、出張時によく利用する。上手い。お肉・お魚・ベジーのどれか一つから選ぶのだが、美味い笑。それもそのはず、提携している有名シェフがメニューを監修しているためだ。GRAINもDah Makanも毎日メニューが変わる。前日オーダーというネックはあるものの、10ドル前後で頼めてしまう、ということで、コスト重視、でもデリバリーを頼みたいという人に人気がある。

シンガポールらしいフード系スタートアップ

 以上の4社が、シンガポールのフードテックを特に賑わせる企業だが、それ以外にも、規模は劣るとはいえ、シンガポールらしいフード系スタートアップもあるので、合わせてご紹介したい。

 まずは、シェフ配達サービスの「Clubvivre」だ。シンガポールのマンションでは、必ずといっていいほどBBQキットがついており、週末になると友人同士でBBQをやったり、部屋の中でホームパーティをしたりすることが多い。持ちよりの料理も楽しいが、せっかくならきちんとした料理が食べたい……、そんな人が利用するサービスだ。空き時間のあるシェフが、マンションまで行き、予算に合わせて料理を作ってくれたり、BBQを取り仕切ったりしてくれる。シンガポールは富裕層が相対的に多い国だ。懐に余裕があり、ちょっと贅沢な週末を自宅で過ごしたい……、そんな富裕層が好んで使いそうなサービスだ。

 一方で、庶民向けな、かつシンガポールらしいサービスもある。「Hawker Today」だ。シンガポールには、至るところにHawker Centerというフードコートがある。一食当たり5-8ドルくらいで十分美味しいローカルフードが食べられるわけだが、このHawker Centerに特化したデリバリーアプリだ。例えばチキンライス。私にとっては、特にHawkerのチキンライスだとどこも同じ味に見えるが……、シンガポール人に言わせると全く違うらしい(笑)。美味しくて安いHawkerには常に行列ができるため、待ちたくない、家で食べたいという人にとってはニーズがあるようだ。

 このように、たった500万人の人口に過ぎないシンガポール国内マーケットでさえも、フード関連スタートアップは、競争環境が激化し、盛り上がりを見せている。一体、誰が市場を制覇するのだろうか。もしくは、更に新しいプレイヤーが参入するのだろうか。米国では、ドローンを活用したモデルや、ロボティクスを活用したデリバリーが試験的に始まっているようであるし、近未来でさえ、まだ誰も想像つかない世界が待っているかもしれない。フードテックから目が離せない。


  
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