物の怪や鬼、化け物など、古来さまざまに造形化され、描かれてきた妖怪たち。縄文時代に造られた奇怪な形の土偶から、現代の「妖怪ウォッチ」まで、四千年にわたる妖怪のイメージの変遷をたどる展覧会が開催される。
奈良国立博物館蔵 佐々木香輔=撮影 ※前期(7/5~31)展示
展示は、妖怪の図鑑が作られるなどキャラクター化が進み、錦絵や演劇の題材として庶民に浸透していった江戸時代から始まる。古道具に霊が宿って妖怪となった様子を描いた、伊藤若冲(じゃくちゅう)の「付喪神(つくもがみ)図」、浮世絵に描かれた妖怪画の中で人気の高い、葛飾北斎の「百物語」や歌川国芳の「相馬の古内裏(ふるだいり)」など、江戸を舞台に花開いた妖怪画や幽霊画の世界へといざなう。
そして妖怪のルーツとなった、中世の絵巻物へと展示は続く。いずれも重要文化財の、室町時代の「百鬼夜行絵巻」や鎌倉時代の「土蜘蛛草紙絵巻」など、貴重な作品が並ぶ。なかでも必見なのが、邪鬼を退治する神々の姿を描いた国宝の「辟邪絵(へきじゃえ)」で、当時仏教によって広まった地獄の思想を造形化したものが、後世の妖怪へと転じていく、その原点を知ることができる。
説明のつかない奇怪な現象や、異界への恐れが形になったともいわれる妖怪。不気味だがユーモラスな妖怪画を見比べてみるのも、蒸し暑い夏ならではの楽しみだ。
●大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで
<開催日>2016年7月5日~8月28日
<会場>東京都墨田区・東京都江戸東京博物館 (総武線両国駅下車)
<問>☎03(3626)9974
http://yo-kai2016.com/
*情報は2016年5月現在のものです。料金・時間・休館日などの詳細は、お出かけの際、現地にお確かめください
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