前向きに読み解く経済の裏側

2016年8月8日

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 こうしたことは、「マスコミが悪いから生じている」ということでは決してありませんが、マスコミの情報の受け手側が「マスコミの情報には悲観バイアスがかかりがちだ」ということを認識しておく必要がある、というわけです。

リスクの指摘に熱心な人が多い

 筆者の専門分野である景気予測についても、正しい情報を得ることは困難です。統計の数字は基本的に正しいので問題ないのですが、エコノミスト(景気を予測する人)の発言には要注意です。彼等には、心配なことを列挙するインセンティブがあるからです。

 まず、「大丈夫でしょう」という人よりも、「◯○の問題があり、××のリスクがあります」と言う方が賢く見えます。日本人は問題点指摘型の話を聞きたがるので、その方がファンも増えるしマスコミも取り上げてくれるでしょう。

 余談ですが、筆者自身の体験としても、はじめて調査レポートを書いたとき(今思えば、バブルの絶頂期でした)に上司に言われたことがあります。「景気の先行きに一点の曇りも無い、という君の予測は正しいと自分も思う。でも、このまま印刷したら、読者が君のことを何も考えていない素人だと思うだろう。景気の先行きには一点の曇りもないが、日米貿易摩擦は心配である、と書き直してから印刷しなさい」。なるほど、と思ったことを今でもはっきりと覚えています。

 次に、リスクを指摘して、それが実現しなくても、誰も気にしないということが挙げられます。リスクが実現しなければ皆がハッピーなので、エコノミストの昔の発言など蒸し返したりしない、というわけです。万が一蒸し返す人がいたとしても、「リスクを指摘しただけだ」と言えば、それで終わりでしょう。一方で、列挙したリスクのうちで一つでも実現したものがあれば、「私が正しく指摘した通り」と大声で自慢できるわけです。

 こうしたことは、エコノミストの景気予測に限られたことでは有りません。世の中で幅広く起きているとお考えいただいて間違いないでしょう。

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