対談

2016年6月23日

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久松:『はじまりのコップ』を読んで、実際にお会いして、お互いに似ているなという印象が強まりましたね。ドライに合理性で考える部分と、そうでない部分が。二人とも素直じゃないし、たぶん本業に集中したらもっと稼げる(笑)。

 僕の場合、人生を変えるほど強く憧れて農業の世界に入ったけど、入ってみたら真ん中にものすごく空虚なものが居座っていた。それは有機だけじゃなくて、たとえばよく「伝統野菜」なんていわれるけど、どんなに古い品種でもせいぜい奈良時代までで、ほとんどは戦後生まれのものばかり。イメージを戦略的に使っているならいいんだけど、「伝統を守っている我々は税金で守られて当然」という思考になりがちなのは、すごくがっかりしてしまいますね。新規参入者はこんなやつらに負けていないで、蹴散らせ、と。

左藤:ガラスは伝統がないからそういう部分はないですけど、焼き物でも伝統のうま味はもうないと思うんですよね。信楽だから、備前だからという理由で買う人はほとんどいないんじゃないかな。山で採ってきた土ではなく買った土で作っていることはちょっと詳しい人はみんな知っていますからね。漆みたいに補助金が出るものを除けば、伝統工芸として売っていくことは難しくなっていると思いますね。

久松:幻想商売が成り立たなくなってきた時代に当たったことは、左藤さんにとってはいいことですよね。

左藤:あ、そうですね。その方が面白いですし、「伝統産業」として周囲から見られながら続けていくのって、けっこう辛いことなんじゃないかな。たとえ儲かるのだとしても、ちょっと嫌だな、って思いますね。

「作家たるもの売るべからず」?

久松:『はじまりのコップ』の中で左藤さんが、販売店との関係は対等でないといけない、委託販売では売り手から知恵が出ないんだとおっしゃっていて、僕もまったく同感でした。作り手が売り手を選ぶことも必要だという考えは、初期からあったんですか?

左藤:自分でも店に行って買うのが好きなので、良い店かどうかを見極める力はあった気がします。売上の何割かを取られても卸すのは、発信力などのプラスアルファがあると思えるからであって、自分でも店を選ぶのは当たり前だと思うんですよね。若い作家で売り先のない人は、卸値を安くしても買い取ってもらえれば御の字となりがちなんですけど、それでは長くは続きません。

 今のところうちは直販と卸しが半々くらいですが、業界全体で見ても直販の比率が上がっています。僕もやっていますがクラフトフェアなどでお客さんに直接買ってもらう機会が増えているんです。そんな状況だから、なおさら信頼できるお店に卸したいと思っています。

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