パラアスリート~越えてきた壁の数だけ強くなれた

2016年6月30日

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野口さんが使用しているクラッチ

 野口が一番多く手掛けているのは圧迫骨折や椎間板ヘルニア用のコルセットである。義肢装具士は物づくりのプロだが、どんなに良い装具ができたとしても患者との信頼関係が築けず、もし使ってもらえないようなことにでもなれば、それはただのガラクタになってしまうと言う。

 ゆえに、物づくりのプロと言えども、肝心なことは患者とのコミュニケーションであり、そこから生まれる信頼関係にある。

 「僕たちは手術の前に患者さんの身体を測ることもあり、最初はとても不安を感じているときにお会いします。その後は手術を終えて装着するときにもお会いしますし、装具が合うとか、合わないとかのやり取りもあります。入院患者さんの場合ですと、『調子はどうですか』と病室にも伺います。なので、患者さんたちが治っていく過程にも接しています。

 僕が義肢装具士になってよかったと思うのは、患者さんが治って装具を外した姿を見ることですし、『ありがとう』と言われたときですね。退院後、定期検診の際にわざわざ訪ねてきて『おかげで良くなったわ、あなたで良かった』と言われたことがありましたが、患者さんが頑張っている気持ちが伝わってくるだけに、この仕事をしていると泣きたいくらい嬉しいことがあります」

 野口は現在25歳でキャリアは4年。義肢装具士としてのキャリアは浅く、まだ仕事の話ができるまでに至っていないとしながらも、自身が椎間板ヘルニアを経験し、肺気胸の出術を3回も受けていることから、その経験を踏まえて「患者さんの目線で、患者さんの気持ちを汲める義肢装具士になりたい」と語っている。

アンプティサッカーとの出会い

 そんな野口がアンプティサッカー(主に上肢、下肢の切断障害を持った選手が行う競技)を知ったきっかけは学生時代に見た1本のビデオである。
日本代表のエンヒッキ・松茂良・ジアス(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3023)の強烈なプレーと共に、クラッチを使ってプレーする選手たちの姿が印象的だった。「自分もこのサッカーに関わりたい」と思ったが、学生時代は時間的に新しいことを始める余裕がなかった。

 実際にアンプティサッカーに接したのは(有)坂井製作所に就職してからのことだ。

 「国リハ(国立障害者リハビリテーションセンター学院)の同期が、埼玉県障害者交流センターに勤務していて、たまたま僕がアンプティサッカーのことを話題にしたら、『勤務先の施設でもやっているよ』と言って、日本代表の新井誠治さんを紹介してくれたのです。自分でも早いなと思いつつ、参加させてもらった練習初日に『入ります!』と言って入れてもらいました(笑)。

 運よく日本選手権のスタッフ登録ギリギリのタイミングだったことも重なって、この世界に入ったのですが、決勝は延長戦にもつれ込む激しい試合になりました。あの優勝以来、すっかりアンプティサッカーにはまったのですが、あまりにも凄い試合を見せられて涙が溢れてしまいました(笑)」

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