2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2016年7月12日

筒状のPodが並ぶ

ハイパーループが“21世紀のシルクロード”創出?

 そのハイパーループ・ワンが、ロシア企業スンマとの提携を発表した。スンマは第三セクターとして港湾での物流、エンジニアリング、建設、テレコム、石油ガス生産などを行う巨大コングロマリットだ。バックにはロシア政府があり、政府を挙げてハイパーループの国内導入に積極的な姿勢を見せる。

 ハイパーループ・ワンによると、最初の目標はモスクワ周辺に時速400マイルほどの「低速」ハイパーループ網を築き、現存の地下鉄システムに置き換わるものにすること。1600万人の人口を持つモスクワ市は、世界の大都市と同様に交通渋滞に悩まされ、市内の住宅価格は高騰している。ハイパーループ網を設けることでより離れた場所からの通勤が可能になり、市内の渋滞も解消できる、とモスクワ市は大いに乗り気だという。

 しかし、ハイパーループ・ワンのさらなる目的は、「21世紀のシルクロード」を築くことにある。物流の観点で、シベリア鉄道をハイパーループに置き換えると、中国からモスクワまで1日で物資を運べる。時速800マイルの高速ハイパーループは、人よりも物の移動により適した交通機関でもある。

 ロシアは中国が主張する「ワンベルト・ワンロード」あるいは「ユーレジアン(Eurasian)・エコノミック・ユニオン」の中継地となる。ユーレジアンとは中国中心部と欧州とを陸路で結び、物流網を密にして経済的なつながりを高めよう、というアイデアだ。英国が脱退してニュースになっているEUを、ロシアと中国を入れて拡大する、という野心的な構想。もし実現すれば、ハイパーループによる物流はユニオンの動脈となるだろう。


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