見ず知らずの土地にやってきた蜂谷さんが移住して起業できたのは、室戸の人たちの支援が大きかった。地元で滞在型健康施設ニューサンパレスむろとを運営する病院理事長が蜂谷さんのスタートアップを支えた。試作を繰り返してコンフィが生まれたのも、この施設の厨房を借りてのことだった。
さらに、ここで「むろっとBBQ」というイベントも行っている。東京など都会に住む人と、室戸の生産者との出会いの場を提供するためだ。これまでに6回開催して、1回あたり150人程度集まったそうだ。
自分の孫にそっくり
同施設の岩貞光江さんは、「あの子のバイタリティーはたいしたもの」だと蜂谷さんを評する。「着実に前に進んでいる。ああいう子が室戸にあと2人くらい欲しい」と笑う。
蜂谷さんはすっかり地元に溶け込んでいる。「自分の孫にそっくりだと思った」と初対面を振り返る前田和子さん。もともと漁協で働いていたが、蜂谷さんに口説かれて今はうみ路で働く。蜂谷さんが前田さんに付けた呼び名は「かずぴー」。前田さんも「はっちゃん」と呼ぶ。まるで本当のおばあちゃんと孫のようだ。
室戸市は市とは言っても人口はわずか1万5000人。全国の市の中でも下から5番目だ。高知市内から車で2時間はかかる。人口減少に苦しんでいるのは言うまでもない。そんな室戸で蜂谷さんの取り組みが、活性化の起爆剤になるかもしれない。
今年の春、新しい戦力が加わった。氏川彩加さん。もともと室戸の出身だが、神戸に出て写真家になっていた。Uターンして室戸に戻り「ジオカフェ」の店長になった。商品や地元の良いモノのプロモーションなどがますます活発になっていくに違いない。
(写真・生津勝隆 Masataka Namazu)
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