2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月6日

 この論説は、ロシアが米大統領選挙に秘密工作で介入する可能性を指摘したものです。

 7月24日、民主党全国委員会委員長ワッサーマンシュルツ女史が、党大会前夜に辞任の意向を表明しましたが、その理由は民主党全国委員会のメール約2万件がウィキリークスで暴露され、その中で同委員長がサンダース候補のキャンペーンの勢いを止めるために同候補の宗教観についての質問をするように推奨したことが明らかになったからです。民主党委員長は中立ですから、当然の辞任でしたが、このウィキリークスの情報源はロシアだったと思われています。

クリントンのEメール

 トランプはこれを受け、ロシアが入手したクリントンのEメール(クリントンは私用端末で秘の情報をやり取りしたとされていますが、FBIはこれを軽率としつつも、不起訴処分にしました)をモスクワが公表するように呼び掛けています。ロシアの行為は国際秩序を乱すものであり、それを推奨するようなトランプ発言は不適切です。

 このようなことが大統領選挙の結果に影響することはあまりないと考えられますが、こういうロシアの行動は米国民の対ロシア感情を悪化させるでしょう。ロシアがトランプを応援していることが明らかになれば、トランプに不利に作用するように思われます。しかし秘密工作は、関与が「もっともらしく否認」できるように行われるので、下手人の特定には時間がかかることになります。

 クリントンが次期米大統領になるでしょうから、プーチンがトランプを応援し、負け馬に賭けるのはロシアにとって利益にならないように思われます。クリントン大統領になれば、ロシアとの関係は良くなる見込みは少ないでしょう。

 なお、イグネイシャスは、トランプのことをロシアの諜報は「useful idiot」とみなしているのではないかと観察していますが、多分その通りでしょう。
 

  
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