2024年11月21日(木)

ビジネスパーソンのための「無理なく実践!食育講座」

2016年9月8日

糖質であろうが脂質であろうがタンパク質であろうが
摂取カロリーが少なくなれば体重は減る

 体重を減らすために「○○ダイエット」を実践しようと思う人は、そのダイエット法が「消費カロリーを増やす」ことになっているかどうか、あるいは(こちらの方が重要だが)「摂取カロリーを減らす」ことになっているかどうかを確かめてほしい。ビジネスパーソンなら冷静に考えればわかるはずだ。「朝食をバナナと水だけですませば、昼と夜は何を食べてもいい」などという方法で摂取カロリーが減るわけがない。つまり体重が減るわけがない。

 これはどんなにエライ先生が提唱しようが、テレビでシャレタことをしゃべっている有名人が力説しようが同じで、ダメなものはダメ。「糖質を制限すると、こうこうこういう理屈で代謝が変化し体重が減少する」などととうとうと解説しても、糖質とほとんど同じカロリーをもっているタンパク質の摂取量が増えたり、糖質よりもカロリーが多い脂肪の摂取量が増えたりすればトータルの摂取カロリーは増加するので、体重が減るわけがない。

 ついでに紹介すると、カロリー源となる栄養素は糖質とタンパク質と脂質の3つ。つい最近までこの3つを三大栄養素と呼んでいたが、カロリー源となるというだけで「三大」という呼称は科学的ではないということで、2年前からこの3つをエネルギー産生栄養素というようになった(正確にはなったが、理解しにくい言葉になった)。ビタミンやミネラルは、重要な栄養的働きをしはするが、カロリー源になはならない。

 誤解のないようにいっておくが「糖質制限をしても体重は減らない」といっているわけではない。糖質制限をしてかつトータルの摂取カロリーが減少すれば(=タンパク質や脂質が増えなければ)体重は減る。このことは、制限する栄養素が糖質であろうがタンパク質であろうが脂質であろうが、同じ。ということは、タンパク質制限ダイエットも成立するし、脂質制限ダイエットも成立する。

 ただし、いずれの場合も「ある栄養素を含む食品を制限する」ということになると、たとえ体重は減少したとしても、摂取する食材の数が激減してしまう。つまり摂取する栄養素の種類が減少するので不健康になるリスクはぐんと高まる(このことはこのコラムの第1回で書いた)。

 ところで、断食はどうだろうか? これは、ここに書いた理屈からいって(間違いなく摂取カロリーが減るので)体重はかならず減少する。ただし、カロリーが減るだけではなく、摂取栄養素がゼロになる訳なので、そのうち健康を害する。治療のために必要な患者が医師の指導の元で行なう「断食療法」以外は絶対に薦められない。短期間だけ行なうプチ断食は、その期間だけは間違いなく体重が減るが、日常生活に戻れば体重は元に戻る(どころか反動で増えてしまうケースも多い)ので、これも薦めない。

 また、DNA説はどうだろうか? 極端な説としては「水を飲んでも太るDNAが親から遺伝している」というもの。ここまで読んできた読者はすでにおわかりだと思うが、ノーカロリーの水をいくら飲んでも(たとえDNAがどんな作用をしても)摂取カロリーが増えることはない。そこまで極端ではなくとも「口から入ったカロリーが体脂肪になりやすい」というDNAを持っている人はあるかもしれない。

 ただし、ここで注意しなくてはならないことがある。それは、DNAのせいにしてしまうと「真の原因=食べすぎ・飲みすぎ」が見えなくなってしまうことだ。「水を飲んでも太る体質」なのだからとあきらめるがゆえに「適量の飲食をする」ことがおろそかになる。原因を正しく認識できないと正しい対応ができなくなる点は、ビジネスもダイエットもまったく同じである。


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