海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年9月5日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

人種差別者のレッテル

 トランプ候補は、ヒスパニック系及びアフリカ系有権者に対する態度を軟化させていますが、支持拡大のハードルは高いと言わざるをえません。というのは、クリントン陣営は、民主党候補指名争いでバーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)に白人票で劣勢に立たされたため、非白人の有権者に焦点を当てて戸別訪問を地道に行ってきたからです。本選に入り、今その効果が発揮されています。

 民主党候補指名争いにおいて南部テキサス州、中西部ミシガン州及び東部ペンシルべニア州などで戸別訪問を実施した際、トランプ候補に関してアフリカ系やヒスパニック系有権者から筆者が最も多く耳にした言葉は「人種差別者」でした。

 フェアファックス市で標的となっている有権者の家を訪問すると、ヒスパニック系の大工が家を修理していました。彼は筆者がクリントン陣営の運動員であると知ると、こう述べたのです。

クリントン陣営のパンフレットを持ってVサインをするニカラグア出身の大工(筆者撮影@バージニア州フェアファックス市)

 「トランプはKKK(クー・クラックス・クラン)から支持を得ています。私はニカラグア出身です。この国は移民の国です。すべての人に機会があります」

 トランプ候補は、このような有権者の認識を変えるために「国境の安全強化は人種差別ではない」と反論したうえで、異なった人種や民族を包含する大統領になるとアフリカ系やヒスパニック系有権者に訴えています。それにもかかわらず戸別訪問を行うと、同候補に対して彼らが抱いている固定化された否定的なイメージは一向に変わっていないことが明らかになりました。同候補がアフリカ系並びにヒスパニック系に急接近して歩み寄りの姿勢を示しても、投票日までに人種差別のレッテルを剥がすのは、戸別訪問を通じて見る限りかなり困難であると言えるでしょう。

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