海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年9月5日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

新たな攻撃材料

 クリントン候補が国務長官時代、クリントン家の慈善団体「クリントン財団」の献金者に対して同省が便宜を図っていたと米メディアが報じたのです。それに関して、トランプ候補は透かさず同財団を「最も腐敗した財団」と呼んだうえで、クリントン候補が大統領になれば、ホワイトハウスでも同様の行動をとるだろうと批判したのです。

 さらに、トランプ候補はクリントン財団の献金者に便宜を供与できるのは、ワシントンにおける「あらかじめ仕組まれたシステム」がクリントン候補のようなインサイダーやエスタブリッシュメント(既存の支配層)に対して有利に機能しているからだと持論を展開したのです。クリントン候補の便宜供与の疑惑は、トランプ候補が共和党候補指名争いから主張してきたあらかじめ仕組まれたシステムの存在を証明する絶好の機会になっています。

 2016年8月29日に発表されたマンモス大学(東部ニュージャージー州)の世論調査によれば、クリントン候補は国務長官在任時に、クリントン財団への巨額献金者に対して特別な扱いをしたと思うかという質問に対して54%がそう思うと回答しています。トランプ候補にとって、クリントン財団の問題はクリントン候補に対する信頼度をさらに低下させる攻撃材料になっています。

トランプ陣営の限界

 さて、トランプ陣営は、新しいトランプ候補の演出、アフリカ系とヒスパニック系有権者に対する軟化させた態度及びクリントン候補の便宜供与疑惑によってリセットボタンを押すことができるのでしょうか。

 結論から述べますと、たとえトランプ候補が現在の不利な状況をリセットできても、結局、極右色の強い新チームの体質が支持拡大の足かせとなるでしょう。本選で勝つために不可欠な無党派層が逃げる可能性が高いのです。クリントン陣営は、トランプ候補と白人至上主義者の関係を突いたテレビ広告を打って無党派層獲得に全力を挙げています。
 

  
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