海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年9月21日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

ジレンマを抱える有権者

 今回の大統領選挙は、話題が豊富で注目度も高く非常に盛り上がっているのですが、その反面ジレンマを抱えている有権者も少なくありません。以下で、その例を挙げてみましょう。クリントン陣営の標的となっているマレリー・モンローさん(29)の自宅を訪問すると転居していましたが、母親が今回の大統領選挙に関する心境を語ってくれました。

 「悲しい選挙です。トランプもヒラリーも強いリーダーではありません。私はクリントン家がもう一度ホワイトハウスに戻ることを望んでいません。緑の党に投票をしようと考えているのですが、トランプを利することになるので、大きなジレンマを抱えています」

 心理的な葛藤状態にあるのは、モンローさんのみではありません。ニューヨーク市クイーンズ区生まれで、現在バージニア州フェアファックス市在住のイングリッド・モラレスさん(34)も、その一人です。モラレスさんは、次のように述べました。

 「トランプがアメリカとメキシコの国境に壁を建設する提案をしていますが、私はそれに反対です。ヒラリーは、シリア難民の受け入れを主張していますが、それにも反対です。テロリストが国内に入る可能性があるからです。私は2人の間でジレンマに陥っています」

クリントン選対では退出時にスタッフとボランティアが1日1日を勝利したか確認します(筆者撮影@バージニア州フェアファックス市)

対立する親子

 「一緒になればもっと強くなれる」と印刷されたクリントン陣営のパンフレットを持ってジョン・スタントンさんという若者の家を訪問しました。ドアを叩くと母親らしき人が孫と思われる子供の手を引いて現れたのです。

 「ジョンさんとお話をしたいのですが」

 筆者がお願いをすると、この母親らしき人物がこう返事をしたのです。

 「息子は出かけています」

 「クリントン陣営でボランティアをしているモトオ・ウンノと申します」

 筆者がいつものように簡単に自己紹介をして陣営のパンフレットを見せると、彼女は不愉快な表情を浮かべて「あっちに行け」という仕草をしたのです。すかさず、次のように問いかけました。

 「あなたはトランプ支持者ですね。あなたの意見を尊重しますので意見を聞かせてくれませんか」

 彼女は、閉めたガラスのドアを半分だけ開けて、次のように答えたのです。

 「ヒラリーは信頼できません。トランプは人種差別者ではありません。民主党が人種差別者です。共和党はすべての人に機会を与えています」

 そう述べると、彼女は共和・民主両党の歴史の相違について語り始めたのです。トランプ候補は、集会で「共和党はリンカーン大統領の党です」と強調しています。その狙いは、奴隷解放制度を実施したのはリンカーン大統領率いる共和党であったというメッセージを発信し、アフリカ系の票を獲得することです。彼女は白人でしたが、その影響を受けたのかもしれません。

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