海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年9月21日

»著者プロフィール
著者
閉じる

海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

 スタントンさんの母親に礼を述べて、次の標的となっている有権者の家に向かおうと4、5メートル歩くと、若者が駐車場に車を止めて降りてきたのです。彼がスタントンさんでした。筆者が自己紹介を行うと、次のように率直に語ってくれたのです。

 「私と母はよく政治について議論しますが、意見が合いません。私は、サンダース支持者です。2008年はオバマに投票しましたが、彼に失望し12年は投票しませんでした。民主党全国党大会でオバマがヒラリーを支持したのには、ショックを受けました。ヒラリーにはエキサイティングしていません。私はTPP(環太平洋経済連携協定)に反対です。私にはTPPが一番重要な争点です。ヒラリーは、現在TPPに反対していますが、大統領に就任したら立場を変えて共和党と協力して法案を通過させます。そして彼女は「超党派で法案を成立させました」と主張するでしょう。私はこのシナリオを最も恐れています」

選対の壁面に描かれたバージニア州(筆者撮影@バージニア州フェアファックス市クリントン選対)

 スタントンさんは、反トランプの立場をとっていますが、クリントン候補には不信感を持っていました。スタントンさんの自宅と駐車場の間で会話をしていると、息子が待ちきれなくなったのか彼を呼びに来たのです。そこで、筆者はクリントン陣営のパンフレットを出して、母親を説得してくれないか頼んでみました。彼は、笑み浮かべて一言こう言ったのです。

 「無理です」

 戸別訪問を通じて見えてくるのは、有権者のトランプ・クリントン両候補に対する強い不満と不信でした。クリントン陣営のボランティアの運動員は、標的となっている有権者がどの候補に投票をするのかを意思表示するまで、彼らの自宅のドアを叩き続けます。

戸別訪問で配布したクリントン候補とコノリー下院議員(民主党バージニア州第11選挙区)のパンフレット(筆者撮影@バージニア州フェアファックス市)

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る