スタントンさんの母親に礼を述べて、次の標的となっている有権者の家に向かおうと4、5メートル歩くと、若者が駐車場に車を止めて降りてきたのです。彼がスタントンさんでした。筆者が自己紹介を行うと、次のように率直に語ってくれたのです。
「私と母はよく政治について議論しますが、意見が合いません。私は、サンダース支持者です。2008年はオバマに投票しましたが、彼に失望し12年は投票しませんでした。民主党全国党大会でオバマがヒラリーを支持したのには、ショックを受けました。ヒラリーにはエキサイティングしていません。私はTPP(環太平洋経済連携協定)に反対です。私にはTPPが一番重要な争点です。ヒラリーは、現在TPPに反対していますが、大統領に就任したら立場を変えて共和党と協力して法案を通過させます。そして彼女は「超党派で法案を成立させました」と主張するでしょう。私はこのシナリオを最も恐れています」
スタントンさんは、反トランプの立場をとっていますが、クリントン候補には不信感を持っていました。スタントンさんの自宅と駐車場の間で会話をしていると、息子が待ちきれなくなったのか彼を呼びに来たのです。そこで、筆者はクリントン陣営のパンフレットを出して、母親を説得してくれないか頼んでみました。彼は、笑み浮かべて一言こう言ったのです。
「無理です」
戸別訪問を通じて見えてくるのは、有権者のトランプ・クリントン両候補に対する強い不満と不信でした。クリントン陣営のボランティアの運動員は、標的となっている有権者がどの候補に投票をするのかを意思表示するまで、彼らの自宅のドアを叩き続けます。
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