この「アメリカらしくない」というのは、最近アメリカ南部では英語ではなく、スペイン語しか話さない人たちがいることも影響しているのではないでしょうか。
――白人の人たちが、他の人種に描いているイメージはわかりました。実際、中南米系の人たちは経済的に成功していないのでしょうか?
西山:成功している人は比較的多いと思いますね。
まず、福祉に依存している割合を黒人と中南米系の貧困者で比較すると、黒人の貧困者は福祉に依存する度合いが高く、中南米系の貧困者は働こうという意識が強い。
しかし、08年のリーマン・ショックやサブプライムローン危機が中南米系の人たちに与えた影響は重大です。彼らは、サブプライムローン以前はしっかりと働き、それなりの蓄えもし、アメリカ社会で成功するために郊外に自宅を購入し、都市部へ出勤するために車も買った。しかし、その車や住宅のサブプライムローンが破綻した。こうして社会的上昇のキッカケを掴んでいたにもかかわらず、サブプライムローンにより仕事や生活が立ち行かなくなる人たちも一定数います。そうした人たちが失業後、福祉に頼ることとなってしまった。
黒人と中南米系に対する勤労意欲のイメージがない白人からすれば、やはり中南米系も黒人と同じく福祉に頼っているじゃないかという意識が強くなったと言われています。しかし、実際には中南米系でも、黒人でも真面目に働いている人たちは多くいます。メディアなどで報道されるのは、どうしても福祉に頼って生活している人なので、そういうイメージが強くなってしまったのかなと。
――ここで西山先生の専門である犯罪政策に関連することを聞きたいのですが、移民が多い国でよく言われるのは、移民が多くなると治安が悪化すると。アメリカ国内では移民と犯罪率は関係があるのでしょうか?
西山:一般論として、移民は犯罪を行いたくないんです。罪を犯せば、国外追放されますからね。ですから、アメリカ国内でずっと暮らしていきたいと思っている一般的な生活をしている移民の犯罪率は、そうでない人達と比べ低いと言われています。
ただ、刑務所に収監されている人や、警察のお世話になっている人の数で言えば、移民の方が圧倒的に多くなってしまう。これは刑法を犯しているかではなく、移民法に関わる法律や行政法関連に違反し刑務所や警察に捕まっている人がいるからです。しかしながら、刑法を犯しているわけではないんです。
また黒人や中南米系は、パスポートを所持しているのか、合法的な身分を持っているのか、警察官から呼び止められることがあります。その際に違法行為である、たとえば麻薬を所持していることが発見されやすい。よく話になるのが、黒人と白人ではどちらが麻薬をより使用しているかというもので、実は白人の方が多いのではないかという話があります。しかし、黒人などは警察からの尋問を受けやすいですから、数字上は黒人や中南米系の犯罪が格段に低いとは言えないまでも、実際に摘発されていない犯罪の暗数を比べると、白人はもう少し割増になるはずです。
もちろん、犯罪目的で入国する人たちもいます。あるいは、元々そういう動機がなくても差別などで職を失い、喰うに困り万引きなどの犯罪を行ってしまう人もある程度はいます。