2024年4月19日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2016年9月29日

――その不法移民というのは、どれくらいの数がいて、アメリカ国内ではどんな権利が与えられているのでしょうか?

西山:数を推定することは難しいですが、1000万人以上は確実にいるだろうと言われています。

 不法移民の権利は家族全員が不法移民なのか、合法的な地位を所持している家族がいるか、あるいはアメリカ国籍を取得している家族がいるかどうかという状況によります。

 アメリカでは、不法移民であれ、旅行者であれ、国内で出産すればその子供はアメリカ国籍となりますから、アメリカ国民と同じ権利を持ちます。また、アメリカでは学校区ごとに校長先生の選挙が行われる所が多いです。仮に子供の親が不法滞在だとしても選挙権を持ちます。しかし、これを権利とみなすかは難しいところですね。

 次に、子供自身も不法移民の場合ですが、初等中等教育を受ける権利はアメリカ国民と同じくあります。ここで言っているのは、子供は教育を受ける権利があり、親は教育を施す義務があるということですが、親は必ずしも学校に通わせるということではなく、ホームスクーリングとして親が自宅で教育をしてもいいわけなんです。

――移民の国であるアメリカには様々なエスニック集団が存在します。日本に関連するところで言えば、グランデール市の従軍慰安婦像の問題が思い浮かびます。エスニック集団は、自民族に有利な政策や目的を達成するためにロビー活動を展開しているのでしょうか?

西山:そこは難しいところで、そのような観点から行動している団体もいれば、必ずしもそうとは言えない団体もいます。

 例えば、ユダヤ系ロビー、正確にはイスラエルロビーですが、その活動はイスラエル人たちにとっては有利な活動ではありますが、アメリカ国内のユダヤ系の人達にとっては迷惑な活動をしている場合もあります。イラク戦争時、ユダヤ系アメリカ人の大半は戦争に反対しましたが、イスラエルロビーは賛同していた。そう考えると一体、出身国の利益のためか、それともアメリカ国内の同じエスニック集団の利益のために働いているかは難しいところですね。

 また、日本で話題になるアメリカのコリア系は、日本で報じられているのとは若干違うところがあります。

――具体的にどういうことでしょうか?

西山:日本の一部報道では、アメリカのコリア系は反日意識が強く、韓国政府の思惑通りに行動しているとの指摘があります。しかし、そもそもアメリカへ移住したコリア系は、韓国が軍事政権の時代に不満を持ち移民となった人が多いんです。

 また本書には書きませんでしたが、ニュージャージー州にも慰安婦問題に関する決議を採択したユニオンシティ市があります。私はニュージャージー州の大学に留学していた頃、ユニオンシティに買い物などに出かけていました。そこは反日意識が強いかといえば、そんな雰囲気を感じ取ったことがありません。


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