2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2016年9月29日

――ここまで、中南米系や黒人のイメージと実際について話を聞きました。それでは民主党や共和党は移民に対し、どういった態度なのでしょうか?

西山:民主党、共和党と言っても、ヨーロッパの政党のように移民政策で一枚岩ではありません。共和党でも大企業経営者、例えば元大統領のジョージ・W・ブッシュや前回の大統領選候補であるミット・ロムニーなどは移民に対し寛容です。彼らは、自宅の家事などをそうした移民に任せていますからね。

 その一方で、共和党内に根強く残る「アメリカファースト」や「英語を話せない奴らはアメリカ人ではない」と発言するような議員が党内で一定の影響力を持っているのも事実です。大統領予備選や党員集会で投票率が低い場合、彼らを支持するような人たちは政治活動に熱心なので、どうしても党内で力を持ちます。

 また共和党内にも民主党内にも、移民出身の支持者がいますが、同じ中南米系出身であっても、移民に対する態度は違います。例えば、共和党支持の移民出身者は、正規のプロセスを経て、苦労を重ね、アメリカ国内に滞在する合法的な権利を手に入れた人が多い。そういう人たちからすると、自分たちは苦労して権利を手に入れたのに、どうして簡単に合法的な労働許可を与えないといけないんだと考える人も多い。移民からアメリカ国籍を取得した人であっても、民主党支持者と共和党支持者で立場の違いがあります。

――この記事をここまで読んでいる人の中には、どうして不法移民をアメリカ政府は強制送還しないのかと疑問に思う人もいると思います。

西山:簡潔に言えば、不法移民の数が多すぎて出来ないんです。

 最近、オバマ大統領が不法移民に対する行政命令を出しました。その命令は、不法移民をどのような基準で母国に送り返すかというもので、それによれば全ての不法移民を送り返すだけの予算がないので、一部の移民を選抜的に送り返すというものです。選ばれるのは、例えば重罪を犯した人で、逆にそうでない人は送り返さないわけです。

 国のお金で食べさせていくことも出来ませんから、3年間限定で働けるようにするというものです。ただし、対象となるのはアメリカ国内に5年以上滞在し、犯罪歴がないことを証明するとともに、未納分の税金を支払うことが条件です。この行政命令への支持が比較的高いということは、不法移民を全て送り返すことが不可能だという認識が国民の間で共有されていることの表れだと思いますね。


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