■今回の一冊■
TRUE COMPASS 筆者Edward Kennedy, 出版社TWELVW
アメリカ民主党の重鎮で、2009年8月に77歳で亡くなったエドワード・ケネディ前上院議員がまとめた回顧録だ。死後に出版するやベストセラーとなり、ニューヨーク・タイムズ紙の週間ベストセラーリスト(ウェブ版09年9月25日付)の単行本ノンフィクション部門1位で初登場。その後、17週にわたりリストのトップ15に入った。アメリカ人にとってケネディ家はやはり特別な存在であることが本書の売れ行きからも容易に想像できる。
エドワード・ケネディは暗殺されたジョン・F・ケネディ元大統領、ロバート・ケネディ元司法長官らケネディ家9人兄弟姉妹の末っ子だ。偉大な兄たちとは異なり、少し頼りないところがある末っ子らしく、ユーモアを交えながら自らの幼少時代からを赤裸々に振り返っており、華麗なるケネディ家の歴史を改めて知るには格好の書だ。
エドワード・ケネディも1962年に30歳で初当選して以来、死ぬまで上院議員を続け一生を政治に捧げた人物だ。公民権運動、ベトナム戦争、ニクソン大統領のウォーターゲート事件、1期で終わった民主党のカーター大統領、そしてアメリカに明るさをもたらした共和党のレーガン大統領と、60年代以降のアメリカ政治の流れを描きながら、自らの政治家としての歩みを記す。
ケネディ家のはじまり
そもそも、傑出した政治家を生み出したケネディ家の家長はどんな人だったのか。
He had traded brilliantly in the stock market, and invested with his typical acuity in the still young Hollywood movie industry. In 1928, my father had greatly increased his wealth by buying and consolidating two small movie-related businesses into Radio-Keith-Orpheum ---RKO. He’d protected that fortune by phasing out of the market several months before the crash in October of 1929. (p37)
「父は株式の売買でうまく利益をあげ、彼らしい鋭さで、まだ生まれて間もないハリウッドの映画産業に投資した。1928年に父は映画関連の小さな会社2社を買って、(大手映画配給会社の)RKOに統合することで、財産を大きく増やした。父は1929年の株式相場急落の数カ月前に、株式市場から資金を引き揚げ財産を守った」
In 1934, when the U.S. Congress created the Securities and Exchange Commission to protect investors from insider trading, President Roosevelt appointed him chairman of the new regulatory agency. He was the right man for the job precisely because he knew how the system worked. (p46-47)
「1934年、アメリカ議会が投資家をインサイダー取引から守るためにSEC(証券取引委員会)を設立した時、ルーズベルト大統領は、この新しい規制機関のトップに父を任命した。父はまさにその仕事にうってつけだった。株式市場のからくりを分かっていたから」