世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年10月21日

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 上記の論説は、沈鬱な評価ですが、今の現実なのでしょう。しかし、実際、米国のアジア重視戦略が沈みかけているとは思われません。国際関係は常に「何とか切り抜ける」他ないことが多くあります。ここ数年、アジアはその戦略のお陰で何とか均衡と安定を保ってきました。欧州などの国際社会も何とかアジア情勢の重大さを理解してきています。アジア重視戦略がなかったとしたら、中国の行動や振る舞いはもっとひどいものになっていたのではないでしょうか。

 フィリピンについては、心配が現実になってきたとの感があります。ドゥテルテ大統領による米比共同パトロールの中止は強く懸念されます。しかし注意をしながら、対比エンゲージメントの維持、強化を続けていくことが重要です。ドゥテルテの大統領任期は、弾劾などがなければ2022年まで続きます。幸い、ヤサイ外相やロレンザーナ国防相などは今のところ強固であるようなのが救いです。フィリピンも単独で対中外交が可能とは思っていないでしょう。対比経済協力も強化していく必要があります。

今年を逃せば、来年の批准は一層難しくなる

 TPPの批准を来年1月までの米議会の会期中に行うことは段々不可能になってきていると多くの人々が考えているようです。しかしオバマ大統領は、それを推進する立場を変えず、9月20日の国連総会演説でもTPPに言及しています。今年を逃せば、来年の批准は一層難しくなるでしょう。大統領選挙の興奮が終わり、米国が直面する課題について正気を取り戻し、来年1月までの間に議会が承認することが強く望まれます。

 貿易協定は常に米国の国内政治上大きな問題となってきました。それでも最後は何とかディールが行われ、議会の承認を得ることに成功してきました。NAFTA然り、米韓などのFTA然りです。厄介ではありますが、その時々の政権にとって何らの貿易課題を避けることは政治的にできません。次期大統領がクリントンになれば、国内実施法、関係国とのサイド合意等を通じてTPPを動かすことを容認するのではないでしょうか。

 他のTPP11カ国は米国議会承認を支援することが重要です。そのためには、先ずそれぞれの国内手続きを早期に進めることが大事です。それは米国による再交渉の誘惑を阻止することにもなります。日本による早期承認は大きな貢献になるでしょう。そして、11カ国が集団で米議会などに働きかけていくことも重要ではないでしょうか。関係国が単独で動くよりも11カ国が共同で行動する方が効果的です。11カ国が議会などに共同書簡を出すことも考えられます。

  
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