新しい詭弁
ISのメディアはこのダビクの放棄について、「今回の戦いは真のダビクの戦いではなかった。本当のダビクの戦いはこれからやってくる」とし、その理由として、相手側が“十字軍”の勢力ではなかったこと、また「80の軍旗も迫っていなかった」ことなどを挙げ、預言された戦いの条件が整っていなかったと新たな詭弁を弄している。
アナリストらは、ダビクと根本思想の放棄をISの壮大な構想が瓦解しつつあることの証拠と見なしているが、ダビクを放棄することは数ヶ月前から決まっていた兆候もある。ISは9月、機関誌「ダビク」の名前を「ルミヤ」(古代語でローマの意)と変更しているからだ。ダビクを見捨てた後、機関誌が「ダビク」ではあまりにつじつまが合わないと判断したからではないかと見られている。
ルミヤは英仏独語に加え、トルコ語、インドネシア語、ウイグル語、パシュトー語など8カ国語で発行されている。英仏独を除くと、他の言語はイスラム教徒の居住地域であり、ISが海外の支持者らに対しての宣伝をさらに強化していこうとの姿勢を見せている。
しかし、ダビク放棄はISが戦場でいかに追い込まれ、劣勢になっているかを示すものだ。イラクのモスル奪還作戦が進む中、米軍はシリアの本拠地ラッカの制圧作戦の具体的な詰めに入った。滅びの足音が大きくなる中で、ISの対外発信も最盛期の800回から200回以下に減った。得意としてきたプロパガンダの激減はISの退潮をそのまま浮き彫りにしている。
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