いかに常識を学ばせるか
問題は「いかにAIに常識を学ばせるか」という点にある。折しも米国では大統領選挙投票日でもあり、「次の大統領候補はAIになると思うか」という質問が飛び出すほど、人間に近づいたAI への興味は高い。業界にもテスラCEOイーロン・マスク氏のように「AI恐怖症」を隠さない向きもある。
マッキンゼーの研究者、マイケル・チューイ氏によると、大企業のCEOのような複雑かつ責任の重い仕事でも「AIに置き換えられないことはない」という。もちろんそれが実現するには数十年かかるだろうが、AIによる職業置換はエントリーレベルの仕事から始まり、最終的には研究職、データ・サイエンティストでさえAI が対応できる社会は来る、という。チューイ氏は「おそらく2100年には80%の仕事はAIが行えるようになるだろう」と予測する。
2016年のG19諸国のGDP成長を見ても、全体平均では3.6%の成長、うち雇用の増加に伴うものは1.7%、生産性の向上によるものが1.8%。この数字は数年後には雇用の増加部分が1%以下になる、と見込まれる。つまり先進国はAIによる効率の増大でしか経済成長が見込めない時代はすぐそこまで来ている。
企業はパニックに陥ることなく、まず「自社の問題は何か」を特定し、小さな分野から AI 導入を目指すのが望ましい、とパネルでは結論づけた。例えば半年から1年かかるような大掛かりなプロジェクトにいきなり AI 導入、というのは難しいだろう。しかし、例えば人間によるデータエントリーは平均で8%の入力ミスがある、という。こうした基礎的な分野にAIは大きなお役割を果たす。ミスの減少、作業の効率化といった分野から徐々にAI を導入することにより、コストを節約しつつトレンドに乗り遅れない、というのが今後の企業に求められる姿勢になりそうだ。
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