World Energy Watch

2016年11月16日

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再エネの雇用効果は限定的

 クリントンは米国を21世紀のクリーンエネルギー大国にすると大統領選で主張していたが、既に米国は再エネ大国だ。風力発電設備は中国に次ぎ世界2位7500万kW、太陽光は世界4位2600万kWだ。全発電設備量の約10%を占めるまでになっている。再エネ導入が急速に進んだ背景には、投資税額控除による連邦レベルの支援政策に加え、地方政府の支援があった。

 業界団体によると、風力関係の雇用8万8000人、太陽光関係21万9000人だ。太陽光関係雇用の内訳とその伸びは表-2の通りだ。合計すると2010年の9万4000人が21万9000人に倍増以上になっている。

 しかし、2010年から15年にかけて、建設関係の雇用は552万人が645万に増え、製造業は1153万人が1232万人に増えている。太陽光関係の雇用の増加率は大きいものの、雇用数の増加でみると、ほとんど影響を与えていない。絶対数では、石油・ガスなどの鉱業に携わる雇用者数の増加のほうが多い。

 気候変動問題への取り組みに熱心なクリントンは、石炭火力の減少を進めるクリーンパワープランの強化を謳い、シェールガス・オイルの生産に用いられる爆砕法についても否定的な立場を取った。政策綱領では炭素税も打ち出した。しかし、再エネの雇用数が大きく伸びていない状況で、化石燃料の生産に後ろ向きの姿勢を取り、再エネビジネス支援を打ち出しても、有権者へのアピール力はなかっただろう。

トランプで変わる米国のエネルギービジネス

 2009年には、オバマ大統領の気候変動政策を支持する経営者グループが出したニューヨークタイムズ紙の広告に名を連ねたトランプは、2012年には気候変動は米国の競争力を奪うため中国が作り出したでっち上げと主張し立場を180度変える。再エネ導入には否定的であり、太陽光発電はコストが高く、風力発電は景観上問題としている。大統領選では米国のエネルギー自給率を100%にすると掲げ、化石燃料、特に石炭支援を打ち出していた。そのためか、ペンシルべニア、オハイオ、ウエストバージニア州など、ほとんどの産炭州でトランプが勝利を収めた。 

 トランプは、就任して直ぐに行うことにパリ協定からの離脱をあげており、これは実行されることになるだろう。また、気候変動問題に取り組む国連機関への拠出金の停止も実行する可能性がある。現在行われている連邦政府レベルでの再エネ支援策、投資税額控除についても見直すのではとの報道もあるが、共和党議員の地元で再エネに携わっている企業もあることから、一挙に再エネ支援策を打ち切ることはないとの見方もある。

 石炭をはじめとした化石燃料への支援策が導入されることになるだろうが、石炭生産が増加するかどうかは不透明だ。石炭生産が減少している大きな理由は、シェール革命により価格が下落した天然ガスとの競争に敗れていることであり、市場を重視する共和党の立場から打ち出せる支援策は多くないように思える。

日本経済にとって大切なことは何か

 再エネで先頭を切ったドイツ、再エネから化石燃料に舵を切る米国。どちらの国も重視しているのは、産業の競争力を維持、強化することだ。再エネによる経済成長、あるいは雇用創出を大きな目標としていないことは明らかだ。日本経済にとって大切なことも経済成長を支えるエネルギーコスト、電気料金だ。

 そんななかで、再エネにより経済成長が図れると考えている蓮舫代表は、今一度経済政策とエネルギー政策を考えたほうがよい。日本国民にとっては、時代を読めない政党が政権についていないことは救いだが。

  
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