2024年11月24日(日)

World Energy Watch

2016年11月16日

 気候変動問題への対応のため米国もドイツも太陽光、風力発電の導入を行なっているが、それにより経済成長あるいは雇用を作り出すことが最大の狙いではない。太陽光パネル、陸上風力発電設備などは新興国の製品に価格競争力があり、先進国が担えるのは付加価値額が大きくない自国での設置作業、販売だけと分かってきたからだ。雇用の増加を担う製造業に競争力のある電気料金を提供するほうが重要だ。

 2005年には、世界の太陽光モジュールの製造シェアは、日本が50%強、欧州が30%弱、合わせて80%あった。中国は数パーセントのシェアだった。その後の2010年と15年の太陽電池製造大手10社が表-1に示されている。15年にはシャープも京セラも消えた。ドイツQセルズは韓国企業に買収され、かろうじて韓国企業Hanwhaグループとして残っている。2015年の世界シェアは中国・台湾メーカーに押さえられ、日本と欧州は合わせて10%もない。

 欧米諸国は、電気自動車、蓄電技術などでは中国、韓国、日本と競って技術開発に注力しているが、これは再エネビジネスというより、既存産業の強化、新技術開発の側面が強い。

 そんななかでの、蓮舫代表の発言の背景にある政策の理解力には首を捻らざるを得ないが、菅直人元首相も、欧州諸国が再エネの固定価格買い取り制度(FIT)の縮小を模索している最中に、新たにFITを始めるという周回遅れの政策導入をおこなっている。政策の研究も経済への影響の分析も十分に行わずに、適当なことを発言するのは民主党時代からの伝統なのかもしれない。

再エネ政策に悩みを深めるドイツ

 主要国のなかで最も早く1990年にFITを開始したドイツは、2000年に買い取り価格の大幅引き上げを行い、太陽光と風力発電設備の導入量は大きく伸びた。結果、買い取り額を負担する電気料金の大きな値上げを招くこととなり、2010年には負担額は、今の日本のレベルとほぼ同じになった。

 買い取り額抑制のために、ドイツ政府は買い取り額の減額、卸市場での電力の売却額にプレミアムを支払う制度の導入、100kW以上の設備へのFIT廃止などを行った。結果、太陽光パネルの導入量は大きく減少したが、それでも図-2の通り、電気料金への賦課金額は上昇を続け2017年の負担額は1kWh当たり6.88ユーロセント(約8円)と見込まれることになった。賦課金額だけで米国ワシントン州の産業用電気料金、4.23米セント(4.4円)を大きく上回り、ルイジアナ州の家庭用電気料金9.43セント(9.9円)に迫るレベルだ。


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