再エネ設備の導入量は、図-3の通り推移しているが、ここでドイツ政府を悩ますことが電気料金以外にもでてきた。最近急増している北海に設置されている洋上風力による発電量だ。
図-4の通り風力設備からの発電量は増加している。
電力の大需要地である南部の工業地帯に送電されるべき電力だが、南部に送る送電線の建設が遅れているため送れなくなってきたのだ。電力が勝手に隣国のポーランド、チェコなどに流れることが発生するようになった。このため、ドイツ政府は、再エネの料金抑制を目的に導入量への上限を設けた新たな政策を、2017年1月から導入する。
小規模の太陽光(750kW以下)、バイオマス(150kW以下)発電設備を除き、再エネ設備からの電力を入札方式で購入することにしたのだ。2025年に再エネのシェアを40%から45%にするとの2014年に設定された目標は変えないものの、送電線の能力に合わせた年間の設備の導入を図るため導入量に上限が設けられることになった。また、買い取り額も、競争入札の結果抑制される見込みだ。
中国に助けを求める太陽光関連事業者
ドイツを始め欧州主要国は、電気料金を抑制するために再エネ支援制度を相次いで見直した。結果、欧州における太陽光発電設備導入量は激減することになった。2011年、12年には、それぞれ800万kW近くあったドイツの太陽光設備導入量は、15年には150万kWまで落ち込んでいる。スペインでは新規導入量がほぼゼロになってしまった。この設備の落ち込みにより影響を受ける欧州の雇用者数は12万人だ。困った太陽光パネルの設置業者などは中国に助けを求めることになった。
欧州委員会(EC)は、2012年から13年にかけ中国製パネルを不当廉売容疑で調査し、2013年夏から課税を行うことをほぼ決めた。これに対し、中国政府は不当廉売容疑で欧州製ワインの調査を開始し、報復することを匂わせた。中国政府の報復を恐れたECは結局、課税を見送り、最低価格と輸入数量を設けることで中国メーカーと合意したが、この制度は来年3月に見直されることになっている。欧州の設置業者などは安価な中国製パネルが輸入されれば、欧州での太陽光パネル設置量は増えると考え、最低価格制度の廃止を訴えている。
既に、業界団体と400社を超える企業がECに嘆願書を提出している。ECが輸入の最低価格を設けても上記にて触れた通り、欧州の太陽光パネル製造業者は中国企業に対しシェアを失い続け、生き残ることはできなかった。シャープに代表される日本のパネル製造事業者も同じ状況にある。もはや、製造事業者への配慮は不要になったが、安価な中国製が導入されれば、FITなどの制度による支援がなくても欧州での太陽光発電設備導入量が再度増加するかは不透明だ。