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フィル・マクナルティー、サッカー主任記者
サッカーの欧州選手権(ユーロ)は14日、ドイツ・ベルリンで決勝が行われ、スペインがイングランドを2-1で破って優勝した。ギャレス・サウスゲイト監督率いるイングランドは、2大会連続でユーロ優勝を逃した(文中一部敬称略)
イングランド男子代表は、1966年にワールドカップ(W杯)で西ドイツに勝って以来、主要タイトルで優勝していない。多くのファンが58年ぶりの快挙を待ち望んでいたが、前回に続き、あと一歩のところで敗北となった。
スペインは47分、ラミン・ヤマルのパスでスペースを作ったニコ・ウイリアムズが、強烈な低いシュートでイングランドのキーパー、ジョーダン・ピックフォードを破り、先制点を決めた。
対するイングランドは、主将のハリー・ケインが再び調子を崩し、途中交代となった。コビー・メイヌーに代わって投入されたコール・パーマーが73分、左足で冷静なシュートを決め、劇的な逆転への期待を高めた。
しかしその4分後、ミケル・オヤルサバルがマルク・ククレジャのクロスをゴールに押し込み、スペインが勝ち越した。
サウスゲイト監督、またも優勝逃す
主要タイトルを得られないという大きな溝を乗り越えようとしたイングランドの希望は、ベルリンでの厳しい試合で、格上のスペインを前にしてかなわなかった。
有名なスタジアムは、長年の「あと一歩」がついに終わると信じたイングランド・サポーターの白い海に包まれ、その数はスペイン・サポーターを圧倒的に上回っていた。
そして試合終了17分前、パーマーが試合の流れに逆らい、スムーズにゴールを決め、イングランドが同点に追いついたとき、その確信は大いに高まった。今大会のスロヴァキア戦、スイス戦、オランダ戦で見られたような逆転劇を、サウスゲイト監督率いるイングランドが実現しつつあると大勢が感じていた。
しかし、今回ばかりは逃げられなかった。オヤルサバルが決定的な一撃でイングランドの隙を突いた。今大会を勝ち進んできたスペインならではの面目躍如だった。
イングランド側は、デクラン・ライスとマーク・グエヒが終了間際にヘディングシュートを放ったが、ライスはキーパーのウナイ・シモンに、グエヒはダニ・オルモにクリアされ、イングランドの苦悩はさらに深まった。オルモはこのクリアを優勝の瞬間のように喜んでいたし、実際その通りだった。
イングランドの不幸は、この数秒後に確定した。サウスゲイト監督が率いたこの8年間は前進と楽観に満ちていたにもかかわらず、イングランドはまたしても目の前にある成功をつかめなかった。4年前のイタリア戦、そして今回のスペイン戦と立て続けにユーロ決勝で敗れ、さらに2018年のW杯準決勝と、2022年のW杯準々決勝でも敗れた。
サウスゲイト監督が次のW杯でも指揮を執るかどうかは、まだわからない。今回の失望はさすがに大きすぎると、監督はそう考えるかもしれない。
主将ケインとイングランドの苦悩
キャプテンのケインは今大会で3ゴールを決め、ゴールデンブーツ(得点王)の1人となったものの、その他の面では思い通りにいかなかった。
ケインは体調が悪そうで、試合勘もに欠けていた。過去に何度もゴールを決め、イングランドの最多得点記録を樹立したワールドクラスのストライカーの面影はなかった。
イングランドのサポーターは後半開始早々、準決勝の立役者だったオリー・ワトキンスの投入を声高に要求した。ケインがペナルティーエリア内でルーズボールに反応するのが遅かった時には、不満の声が上がった。
サウスゲイト監督はサポーターの望みに応じ、ケインは寂しそうな表情で交代した。キャリア初の主要大会優勝を待ち続けてきたケインだったが、またしても大舞台でのチャンスを逃してしまった。
一方のワトキンスもこの試合では補佐に徹し、ゴールを決めることはできなかった。そうしたなかでパーマーは同点ゴールを決め、再び大きなインパクトを与えた。
サウスゲイト監督はこの試合で、キーラン・トリッピアーに代えてルーク・ショーを左サイドバックに抜擢(ばってき)し、ディフェンスを4人に戻すという大胆な変更を行った。ショーにとっては148日ぶり、イングランド代表としては2023年6月以来の先発出場で、素晴らしいプレーで応えた。
だが、イングランドは他のエリアでは影響力を発揮できかった。フィル・フォーデンは効果的なプレーができず、ジュード・ベリンガムも後半に1度シュートを放った以外はおとなしくしていた。
サウスゲイトと彼の選手たちは、またしても、自分たちが格上の相手と戦っていることに気が付いただけだった。そして2026年のW杯まで、成功への道を進むのを待たなければならなくなった。
若手の活躍がスペインを勝利に
スペインは、ウィリアムズとラミネ・ヤマルという、2人の類まれな若い才能を信頼することで、欧州サッカーの頂点に返り咲いた。両者共に、イングランドにこの特別なトロフィーを取られないよう、重要な役割を果たした。
ウィリアムズは、最初のホイッスルが鳴ったときからエネルギーと信念をみなぎらせていた。ヤマルから先制ゴールのチャンスを与えられた際も、確実にゴールを決めた。
決勝の前日に17歳の誕生日を迎えたヤマルは、またしても年齢以上に成熟したプレーで、常にイングランド脅威となった。ピックフォードから見事なセーブを引き出したかと思えば、再びディフェンスを破り、さらにゴールを狙った。
ヤマルは今大会のベストヤングプレーヤー賞に選ばれ、22歳のウィリアムズはこの決勝でマン・オブ・ザ・マッチに輝いた。2人はベルリンで、スペインのルイス・デ・ラ・フエンテ監督の信頼に見事に応えた。
その点ではスペインは、オヤルサバルの決勝ゴールに頼る必要はなかったはずだ。
パーマーが同点ゴールを決める前には、オルモが単独でゴールデンブーツを獲得する絶好のチャンスを無駄にした。オルモはケインと並び、今大会で3得点を決めた6人の1人だった。
またジョン・ストーンズが、アルバロ・モラタのシュートをゴールライン上でクリアした。
こうしたなか、オヤルサバルが、ククレジャのクロスに飛びつき、こうしたミスを帳消しにした。
こうしてユーロ2024は、傑出したスペインという大会にふさわしい勝者を得た。