この異例ともいえる事態が発生している理由について、西村教授は「社会構造の変化が本格化していることが大きい」と話す。高齢化の急速な進展による購買意欲の減退や、単身世帯の増加に伴う小型パッケージ商品の需要の高まりが進んでいる。全体のパイが収縮する中、価格比較を簡単にできるネット販売も台頭してきており、消費者の節約志向とも相まって、商品の購入金額は減少傾向にある。
消費者の財布のひもがこれまで以上に固くなる中、外食や小売業界各社の販売戦略にも変化が起きている。
企業ドメインの破壊 改革なくして勝機なし
街中を歩いていると、「ちょい呑み」をコンセプトに酒やおつまみを販売する外食店をよく目にする。吉野家が展開する「吉呑み」がその代表例だ。同社は「吉呑み」の導入で夜の時間帯の売り上げが10パーセントほど増加しており、ちょい呑みをするために吉野家へ行くという新たなスタイルも浸透しつつある。
他にも、天丼店「てんや」、ラーメン店「日高屋」など、酒やおつまみを充実させ、ちょい呑み需要を引き込む店舗が増えている。今春にはスターバックスコーヒージャパンまでもが一部店舗で酒類の販売を開始した。
スターバックスといえば、ゆったりとコーヒーを楽しむことができる空間が強みの1つだ。そこで酒類を提供すると、本来の「落ち着いた空間」を損ねる恐れも少なからずあるが、「仕事帰りの女性の来店を目的としている」(同社広報)と新たな顧客層の開拓を探っている。