2024年12月21日(土)

対談

2016年12月10日

飯田:何をしたら楽しいのか、幸せかまでをAIに決めてもらうことはできないということですね。Amazonのレコメンド機能などには、自分の欲望を先回りされたような感覚を覚えることもありますが。

矢野:それが「何を」目指したレコメンドなのかが重要です。

飯田:「何を」を最適化するのは人間である、と。

 やはり需要が育つことが重要なのかもしれませんね。日本にはたくさんの技術者がいますし、理系の学生でも技術者になりたいと思っている人はたくさんいるでしょう。でも今は仕事が少なくて、理工や数理を専攻しても、金融機関で文系と混じったキャリアパスに進むことになる学生が少なくありません。需要があれば技術者の供給は、意外と日本はなんとかなると思います。

矢野:まったく問題ないと思います。需要をどうやってつくるかでしょうね。これまではAmazonなどのeコマースなども、アメリカの方が需要がありました。その需要がもっと現実のサービスに入ってきたときには、日本も捨てたもんじゃないと思います。

 でもまだまだ人間とAIをどうやって組み合わせるのかということに、意識が薄いなとは思いますね。

飯田:需要がしっかりあれば、不思議なもので企業はなんとか供給していきますからね。AIによる「武装」をみんなが体験して、どれだけ多くの人に便利だと感じさせることができるかが鍵ですね。

矢野:どんどん雪だるま式に広がっていくと思っています。

矢野和男(やの かずお)
1984年早稲田大学物理修士卒。日立製作所入社。半導体研究を経て2004年頃からウエアラブル技術により収集したビッグデータ分析や人工知能を活用した企業業績向上研究で注目を集める。開発した汎用AIは既に57案件に活用されている。東京工業大学大学院特定教授。文科省情報科学技術委員。国際的な賞を多数受賞。著書は『データの見えざる手』(草思社)。
飯田泰之(いいだ・やすゆき)
1975年東京都生まれ。エコノミスト、明治大学政治経済学部准教授、シノドスマネージング・ディレクター、財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、規制改革推進会議委員。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。著書に『昭和恐慌の研究』(共著、日本経済新聞社)、『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)、『ダメな議論』(ちくま新書)、『思考の「型」を身につけよう』(朝日新聞出版新著)、『地域再生の失敗学』(編著、光文社新書)など多数。

  


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