2024年11月5日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月11日

 アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のドゥーム研究員が、12月5日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙掲載の論説において、トランプとモディはイスラム過激派との闘いを通じて米印関係を強化できる可能性はあるが、米国がパキスタンへの圧力を強化しない限りそれは難しい、と述べています。要旨は次の通りです。

(iStock)
 

 トランプとモディはイスラム過激派との共通の闘いを通じて米印関係を強化できるか。期待が持てそうだが確実でもない。インドはもっとグローバルに考える必要があるし、米はインドの地域的な懸念に一層の注意を払う必要がある。

 両者は共にイスラム過激派の思想と暴力を封じ込めることに失敗してきた今までの政権エリートに不満を抱いてきた。両者は共にジハード・グループに対する諜報活動に従事してきたマイケル・フリンとアジト・ドバルを夫々安保補佐官に任命した。両者は共に過激派の標的になっていると考えている。

 インドはトランプの貿易政策やアジアの同盟国へのコミットメントなど一部の外交政策については懸念を持っているが、過激派の問題については共和党政権の誕生を歓迎すべきだ。オバマはドローンの使用には躊躇しなかったが、それぞれの勢力に対する個別のアプローチで対処した。トランプ側近が言うようにファシズムや共産主義と同種のイデオロギーとして捉え、それに対して総合的なアプローチを取るということはしなかった。

 イスラム過激派との闘いでインドは重要な国だ。13億の人口を擁し130万の軍隊とソフトパワーを持つインドは米にとり価値ある同盟国になり得る。他方インドはパキスタンに対峙している。同国はムスリム国家であり、軍の諜報機関ISIは多数のジハード・グループを支援してきている。パキスタンは「全天候友邦国」である中国の支持を得て、ジハード・グループを政策手段に使うことを決して止めない。

 インドには1.72億人の穏健なムスリムがいるが、ジハードの風潮から無縁ではない。これまで約70名のIS支持者が逮捕された。米欧がイスラム過激派阻止とムスリムの穏健化に成功すればそれはインドの利益になる。

 インドは、米国が引き続きアフガニスタンの安定を図り、インドに向けられたパキスタンのテロ・グループを抑えるようパキスタンへの圧力を強め、バングラデシュの世俗主義のアワミ・リーグ政権との関係強化に乗り出すことを期待している。しかしインドは近隣地域以遠については一種のフリーライダーだ。67カ国のIS対策有志国グループにも加わっていない。イスラム過激主義を支援するイランには生ぬるい。

 米国がパキスタンのテロに対する姿勢を不問にする限りインドとの協力は始まらない。米国がパキスタンへの圧力を強めない限りモディ政権はより大きな国際的役割を果たすことはできない。パキスタンによればトランプはシャリフ首相との電話会談で同国を「素晴らしい国で、素晴らしい人々がいる素晴らしいところ」だと述べたという。モディはそれがトランプの本心かどうかを見極めている。

出典:Sadanand Dhume,‘The Promise of a Modi-Trump Alliance’(Wall Street Journal, December 5, 2016)
http://www.wsj.com/articles/the-promise-of-a-modi-trump-alliance-1480960669
 


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