2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月13日

 米ヘリテージ財団のクリングナー上席研究員が、12月9日付のDaily Signalで、韓国の内政について解説し、トランプ政権が日韓両国に対する抑止力を再確認し、日米韓三国間の軍事協力を進めるべきであると論じています。要旨は以下の通りです。

(iStock)
 

 韓国国会で朴大統領の弾劾訴追案が圧倒的多数で可決されたことで、同大統領の職務執行権限が停止され、黄教安首相が職務を代行することとなった。リベラル派の最大野党は、黄首相が今回の政治危機に関与しているとして同首相による職務代行に反対している。これに対し、保守派の与党は憲法の手続きに従うべきであると反論している。

 朴大統領の親友に関わるスキャンダルが暴露されたことにより、韓国は過去2カ月にわたり大規模なデモに曝されている。大統領が韓国の経済問題を解決できず、孤高の統治姿勢を維持し、多くの陰謀論が蔓延していることで国民の不満が鬱積し、抗議行動を煽っている。

 各政党は朴解任の場合の次期大統領選挙に備える。保守派のセヌリ党は朴が党首であるので、重大な打撃を受け、分裂することになりそうである。本年12月末に退任する潘基文国連事務総長が出馬する場合には、セヌリ党の残留派とともに新党を結成することとなろう。

 盧武鉉大統領の秘書室長を務めた文在寅を含むリベラル派の候補は今回の不祥事で有利になった。盧大統領は2002年の大統領選で「反米で何が悪い?」と公言した人物である。今回の政治危機により、韓国では野党側の反対により朴大統領の政策の多くが実行に移されず、機能不全が起こっている。

 次期大統領選挙でリベラル派が勝てば、米韓関係が緊張するリスクは高まろう。リベラル派は、朴大統領が米国の強い支援の下に推進してきたTHAADの国内配備、北朝鮮に対する制裁強化、日本との関係改善に反対してきた。リベラル派の諸政党は、開城と金剛山での北朝鮮との経済協力活動の再開を推進し、厳しい条件をつけずに北朝鮮を支援することになるだろう。

 トランプ政権は米国の政権が変わっても、友邦を防衛する米国の公約と決意は変わらないことを同盟国に再保証すべきである。米国は韓国と日本に対する軍事的抑止力の提供を無条件で再確認すべきである。そのためには、オバマ政権の下で進んだ兵力レベル、調達、作戦予算の大幅削減を埋め合わせる為の軍事予算の全面的復活が必要となる。米、韓、日の軍の三角協力は各国の特有の能力を活かすことにより同盟の抑止力と防衛能力を向上させる。ワシントンは韓日両国に対し2015年12月の慰安婦問題に関する合意と二国間の包括的軍事情報保護協定の推進を奨励すべきである。ワシントンは米国法、国際法、国連安保理決議に関する北朝鮮の度重なる違反に対抗し制裁や標的を絞った金融措置を強化すべきである。

出 典:Bruce Klingner‘As South Korea Impeaches President, US Must Remain Steady Ally’(Daily Signal, December 9, 2016)
http://dailysignal.com/2016/12/09/as-south-korea-impeaches-president-us-must-remain-steady-ally/


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