世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月20日

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 今回の中国による米海軍の無人潜水機奪取は、米中間の軍事衝突を引き起こしかねない事件でした。習近平の了承を得たうえで行われたものか、あるいは現場の指揮官またはその上司の独断で行われたものか、よくわかりません。中国指導部の上の方の決定でこういう国際法違反行為がなされたというのであれば、問題ですし、そうではなく軍の下のレベルでの決定で行われたというのであれば、文民統制が効いていないことを意味し、これも問題です。

 中国側はすでに無人潜水機を米側に引き渡し、「道」に変なものが落ちていたので拾って調査しただけなどと言います。しかし米艦は現場で抗議したとされており、落とし物を拾ったケースではありません。

 2001年の偵察機の海南島不時着のケースでは、乗組員と機体を人質にとられている中での交渉でしたが、今回はそういうことはありません。厳重に抗議し、再発防止の約束をさせるべきです。そうすることで、このような危険な行為に指導部であれ、現場であれ、乗り出すことを将来にわたって抑止することを狙うべきでしょう。

声を大にして騒ぎ立てるべき

 こういう不法行為には静かな解決を求めるよりも、声を大にして騒ぎ立てるのが良いです。しかるにCNNが報じるまで、オバマ政権は中国と静かに本件を解決しようとしました。いい判断であったかどうか疑問です。

 中国の海洋での不法な主張や、今回のような9点線外での行動は、航行の自由や公海利用の自由に対する挑戦です。こういう挑戦には毅然として対抗していくことが、不測の事態の生起やそのエスカレーションの危険を防ぐために必要です。中国はサラミを切るように徐々に行動をエスカレートし、相手に小さな変化になれさせる戦術をよく用います。民主国家は気が短いところがありますし、記憶も短いですが、中国は気が長いですから、こういう戦術が有効になります。そのことに我々は注意を払うべきでしょう。

 なお、ニューヨーク・タイムズ紙は、「無人潜水機の中国による奪取への静かな米国の対応はアジアの同盟国を心配させている」との論説を掲載し、米国のより強い対応が必要だと論じています。その通りです。

  
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