この一年ほどの間にテレビ、ラジオ業界のバックパッカーと話す機会があった。自分の知らない業界に生きる人間ドラマであり心を惹かれたのでまとめてみた。
TV制作会社のADクミさんの苦闘
2015年12月 マンダレーの宿で出会ったクミさんはアラサー女子。今回のミャンマー旅行は人生の進路について決断をするために仕事を辞めて飛び出してきたという。
クミさんはテレビの制作の仕事に憧れて専門学校卒業後TV制作会社に就職。8年近いキャリアを番組制作ADとして築いてきた。しかし近年TV業界全体が閉塞感に包まれており年々悪化しているという。理由はTVがネットに押されて広告収入が減少。そのため番組の製作費がカットされ、時間をかけてじっくりとコンテンツを作り込むことができず番組の質が低下。面白い番組が少なくなることでTV離れが進みさらに広告収入が減るという負のスパイラルにあるという。
その結果、番組制作会社の現場スタッフは元来過酷な労働環境が益々悪化しており毎日数時間の仮眠だけで着替えもままならない生活が続いている。バラエティーの収録日直前数日間は泊りがけ徹夜が常態化。企画が少しでも変更となれば一周間アパートに帰れないこともざらにあるという。毎日放送しているニュース番組では番組内容が刻々と変わってゆくので担当スタッフは週日は局に缶詰状態という。それでも良いもの、面白いものを作りたいという現場若手スタッフの情熱と自己犠牲で成り立っている世界のようだ。
例えばバラエティーの企画会議では視聴率が稼げてギャラが比較的低い“芸人さん”が重宝される。ある程度経験のある芸人さんであれば構成作家が大枠を示せば芸人さんが番組をアドリブも入れて上手く進行してくれるのでスタッフの工数も減らせる。その結果どのTV局も“芸人さん頼み”になってしまっているという。
報道番組でも“数字を持っている”、つまり固定ファン層が付いているキャスターやコメンテーターを組み合わせてキャスティングすることがどうしても優先される。こうして代り映えのしないTV番組が並ぶことになるのだそうだ。