「米国は政策上、また運営上の問題として、アジアに2つ、大きな課題を抱えている。中国と日本だ。日本について言うと、普天間のおかげで、米国は岩礁だらけの浅い水域をなんとかかとか渡っていかないといけない。ここでわれわれ、いま思っているのは、これまで日本と付き合う中、大きな問題についてわれわれからきちんと触れることがあまりなかったということ。地域や世界の安全保障に関して、明確に物を言ってこなかったということだ」。
日本が、漂うように離れていく
「その結果、日本が米国から離れて行ってしまうのじゃないか、心配している。意図的に、というより、漂うように離れて行く、ということだろうが」。
「普天間の教訓というのはだから、あまりにもいきなり、日本の内政問題のど真ん中へ飛び込んで行き過ぎたということになる。われわれはそうするより先に、大きな戦略対話を実行しておくべきだった。米国サイドの世界の見方であるとか、日本にはどのような協力を求めているのかといった事柄について、民主党にしっかり理解しておいてもらうべきだった」。
「だから普天間が解決したら――いつかは解決するからね――双方とも一歩退いて、大きな、長期的問題がお互い話し合えたらと思う」。 「この数カ月起きたことのおかげで、かつてなかったほどよく合点がいったのだけど、米国はアジアでも世界でも、要するに成功することができないわけです、強固な米日関係がないところではね。どれほどそうなのかということについて、大衆を巻き込んだ議論が必要だし、自覚することが求められているのだと思う」。
「かといって、この議論を今、始めることにすると、『そうか』、と。『ほかの問題がそんなに重要なんだったら、普天間で合意をつくる必要はそんなにないんだな』と言い出す人が、民主党にはいる。それを心配するわけです」。
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そろそろ今月の記事もまとめに入りたい。米国は米国で、この政権高官やその他の専門家が気づいたとおり、日本で進む政治の変革をつかまえるのに手間がかかったのである。毎週毎週「危機」を報じる日本の報道に、少しとらわれすぎたのだとも言える。
気づいてどんな結果になったかというと、民主党の統治能力に対し、米側の信頼は概して失われてしまったというのがひとつ。この点は、日本の世論調査が正しいなら、日本の選挙民と見解を共にするところだ。
普天間のあとにこそ待ち受ける大きな課題
まただからこそ、米側は、民主党だけでなく、日本の国民をどうすれば巻き込むことができるか方策を思いつかなくてはならない。日本の世論をひたすら内向きにしてしまわないためにも、このことは必要だ。
いろいろな方法はあるが、両国の協力が国際場裏でうまくいっているものに、この際双方は光を当てなくてはならない。例えばアフガニスタンでは日本のJICAが主体となって、職業訓練や警察官の訓練を進め大いに成功してきた。民主党は、アフガン戦支援のため自民党政権が続けたインド洋における給油をやめてしまったけれど、これなどそれを埋め合わせてお釣りがくる仕事である。