マーブル:鳩山政権が初期に示した同盟に対する対応は、ノムヒョン政権当時、韓国がとった対応に比較できるという説があります。当時韓国と応接して何をしたかということは、今後の米日関係を良くするうえで参考になりますか。
フィネガン:その比較にはひとつ誤解があると思っています。ノムヒョン時代、確かに韓国世論には大変な量の「雑音」がありました。それを見て、同盟は弱体化していると考えた人が大勢いました。でもあまり理解されなかったのは、この雑音はひとつの副作用だったということです。実は裏側で、同盟を再定義しようとする積極的で健康的な営みが続いていた。米韓同盟を長期的に、はるかに強くする営みでしたが、表にはその副作 用が雑音として出た。
これは、米日同盟の状況に当てはまりません。米日間の現在の「雑音」が映し出しているのは、米日両国に前進する能力が欠如しているということです。両国間で既に合意済みのこと、これをやることで、同盟に堅固な基盤を与えるということを両国とも納得済みのことについて、いまや歩を進める能力を失っている。
マーブル:ではもう少し長期を見て、米日同盟の進路について何か自信をもって言えることはありますか。
ローレス:もしもわれわれが「なんとかする(get it right)」ことができないとしたら、今後数年の間に、双方が抱く期待の齟齬を解決することができないとしたら、わたしは今後中長期にわたって、同盟がどんどん意味を喪失していくことはたぶん避けられないと思います。もっと言うと、現在の断絶が解決されない限り、中期の尺度で見て、同盟はおそらく本質的な修正を加えられざるを得ないでしょう。そしてこの点が、われわれがNBRへのリポートで述べた核心部分でした。
われわれは、醒めた眼で同盟が何であり、何でないかを分析しました。いまのままでは、同盟は機能することができず、したがってクレディビリティーも得られない、と述べています。それとともに、両国関係を双方政府全力挙げて再検討し、所要の改革をなすべきだ、そのため整除だったプロセスを発動すべきだ、と述べたものです。これをわれわれは、すぐにやる必要がある。
リポートは、いかなる意味でも、改革のためのロードマップを示したものではありません。米国と日本は、新たな目的地に到達する必要がある。その目的地というのは、共通のゴールかもしれないし、ばらばらのものかもしれない。けれども両国は、この大事な歩みを始める必要があるのであって、その際には正直さ、客観性、迅速性をもってすべきである――。その最初の解説を、リポートは試みたまでです。もしもそうした再検討がなされないならば、同盟は、米日双方の国防ツールとしての価値をますますもって小さくしていくこととなるでしょう。
Translated from "Updating the U.S.-Japan Alliance: An Interview with
Mike Finnegan, Richard Lawless, and Jim Thomas," National Bureau of
Asian Research, April 2, 2010,
http://nbr.org/research/activity.aspx?id=77.Copyright (c) The
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谷口智彦(たにぐち・ともひこ)氏
1957年生まれ。慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授、明治大学国際日本学部客員教授。 2005~08年、外務省外務副報道官。先立つ20年『日経ビジネス』記者、編集委員。この間ロンドン外国プレス協会会長、米ブルッキングズ研究所CNAPS招聘給費研究員、上海国際問題研究所客座研究員など。著書に『通貨燃ゆ 円・元・ドル・ユーロの同時代史』(日本経済新聞出版社)ほかがある。
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