田部康喜のTV読本

2017年2月8日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

かみ合わないセリフ、心が通うと……

 ドラマは第3回(1月31日)に至って、すずめ(満島)の過去が明らかになる。少女時代に父親の欧太郎(高橋源一郎)にそそのかされて、「超能力少女」として詐欺の相棒にさせられていたのである。

 欧太郎が千葉市内の病院で死が近いことをいとこの中学生が、軽井沢のすずめに知らせにくる。少年はネットですずめの過去のテレビ出演の動画と、不動産会社に勤務していたときの同僚のブログを発見したのである。すずめは、20年間も父親と連絡を絶っていた。

 「超能力少女」時代の経歴をネットで同僚たちに知られて、いじめにあって退職に追い込まれた。いつも笑顔を絶やさず、しかし会社の宴会には参加せず、ひとりで昼食の弁当を食べていた。過去がばれて居づらくなった経験が重なっていたのである。

 父親の欧太郎が入院している病院の近くまで行きながら、すずめは病院に入れない。死にかけているのを電話で知ったのは、軽井沢にいた真紀(松)であった。そして、死の瞬間に立ち会ったのも彼女であった。部屋に入ってきた真紀をみやって、欧太郎はすずめであると思ったのか安心したような表情を浮かべて、息を引き取る。

 病院から出た真紀は、逃げるようにして去ろうとしている、すずめを見つけて引き留める。そして、蕎麦屋に入る。

 すずめは「かつ丼」といきなり注文する。

 「わたしも」と真紀。

 真紀が欧太郎の死をすずめに告げ、「病院に戻ろうか」という。

 「かつ丼を食べてから」と強い調子ですずめ。

 ビールのポスターに気づいたような風を装って、すずめは真紀に背を向けて、過去を語り始める。

 少女時代に父親がカネを借りた相手が病気になっても、お見舞いに行かなかった。「病院にいって風邪をもらったりするのが嫌だ」といったという。ビルの建設業に関わって、建築途中で土台の不具合がばれた日、ラーメン屋で作り直しを命じていたことなど。

 「すずめちゃん、かつ丼を食べたら、軽井沢に帰ろう」と真紀。

 「私ね、過去がわかると、カルテットを辞めなければならないと思っていたの」

 ふたりのセリフがかみ合わないままに時が過ぎて、ふたりの心が通ったときにセリフがそれぞれの胸にしみわたる。

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