それがデジタルカメラの普及が進むにつれて忠実再現では物足りなくなって、「記憶色」に変化していったという。デジタル機能の善し悪しというかイメージ色、たとえば「空って、こんな色だったよな」という記憶を再現するような絵作りにユーザーの要求が変化していった。
さらに5、6年前頃からは「空だったら抜けるような青空であってほしい」という「期待色」に絵作りの要求が変化していったという。デジタルの世界は、それが可能なのだ。機能を開発するエンジニアには、時代やデジタル機器への習熟度によって変化するユーザーニーズを埋めるユーザビリティも考慮して開発しなければならない時代になってきている。
デジタル機能を作り上げるエンジニアとユーザーとの間で、その操作性や求める機能のギャップが問題として浮上し始めているが、その多くはユーザビリティへの配慮不足から不具合が生じるケースが多い。携帯電話や事務機器なら使い勝手などのトラブルで収まるケースが多いが、自動車や公的な輸送機器などでこうしたギャップが生じれば人命にかかわることから、ブランド力の毀損も含めその影響は甚大だ。
「これからは機能の絞り込みがテーマとなる。これまではエンジニアやメーカーが過剰な機能をユーザーに提示してきた。しかしこれからは、ユーザーの声に基づいた製品開発に流れを変えても良いかもしれない」。自動車の電子制御に携わるあるエンジニアの意見は象徴的だ。エンジニアとユーザーの意識のギャップを埋める「ユーザビリティ」。今後の日本のもの作りの新たなテーマとなりつつある。
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
週に一度、「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。